日本に多い仏教を宗旨とする家庭においては、故人の冥福を祈るために、没後の一定期間に追善法要を含む追悼行事を行います。それらを総称して「法事」と呼ぶのです。
仏式の法事というものは、歴史も長いのでさまざまな作法やマナー、進行のパターンなどが存在します。
そして施主を務めるべき人は、その流れを把握して準備をするとともに、いくつかの要所で参列者を前に挨拶もしなければなりません。
初めて施主を務めるとなれば、分からないことだらけで、誰しも不安になっても無理はありません。
この記事ではそんな場合に備えて、法事の挨拶の例文や流れに関しての基本知識を網羅して紹介します。
将来の備えとして、あるいは今まさにそのタイミングになっている場合の参考にしてください。
場所ごとに違う法事の流れ
法事は行われる場所が多岐に渡ります。
お寺で行う場合もあれば自宅でも行われます。あるいは斎場で行うこともあります。それぞれの場所に応じて、進行の仕方も少々違う点があるので、ここでは法事を行う場所ごとの流れを紹介しておきます。
お寺での法事の場合
お寺で法事を行う場合に、施主側は故人様のお位牌や供物、供花などを持っていく必要があります。
そして僧侶の指示に従い、法事会場の設営作業を自分たちでしなければなりません。(※但し、最近では設営をしていただけるお寺が多くありますので、対応をどこまでお願いできるのか確認し、相談するとよいでしょう。)
やがて開始時刻に参列者が揃って着席した後に、ご住職が導師を務める読経が始まります。そして読経の途中から焼香へと続きます。
焼香の冒頭は喪主から始まります。
そして、親族の中から血縁関係の濃い順に行い、それが終わると友人、知人という順に行います。
斎場での法事の場合
斎場で行う法事の場合は、法要自体の流れはお寺での場合と同じです。
大きく違うのは、会場の設備が整っており、設営もすべてお任せできる点です。
段取りで手間がかからない面や、食事も手配を任せられるので、昨今では斎場で行う家庭も多くなっているようです。
自宅での法事の場合
自宅での法事の場合は、僧侶を自宅にお招きするので事前に来訪方法を確認し、必要に応じて迎えにいくなどの配慮が必要です。
僧侶が到着されたら、まずお茶などでもてなす間を取ります。
その後に、ご仏前に蝋燭を灯し、供花や供物を供えます。
参列者がひと通り揃ったら一同着席し、読経、そして焼香と続きます。
焼香順に関してはお寺の場合と同様に、施主から始まり血縁関係の濃い人が続き、友人、知人となります。
法事での挨拶について
葬儀後の初七日に始まる一週間ごとの四十九日までの法要(3ヶ月にまたがる場合は三十五日までの場合もある)や、一周忌、三回忌などの年忌法要を包含する法事において、施主が挨拶をする機会が多いのです。
親族あるいは故人様と親しかった方々などの参列者に対して、施主が真心からのおもてなしをし、それにふさわしい挨拶もする必要があります。
ここではそれぞれの法事で、施主はどのような挨拶をするのが望ましいかという観点で、心構えと参考になる例文も紹介します。
法事の挨拶の心構え
日本の大乗仏教の考え方では、人は亡くなった後に、その魂は四十九日間は成仏せずにさまようとされています。
そして魂は閻魔大王など十王から七日ごとに七回裁きを受けるとされ、四十九日目に最終的な審判が下されるとされています。
遺族や友人、知人は故人様が極楽浄土へ向かえるように、この世から祈りを手向けて手助けをするのです。
このような祈りを善根(幸せになる良い原因)を回し向ける意味から追善回向(えこう)と呼ばれます。
このことを踏まえて、施主の挨拶は故人様に祈りを手向けて頂いた参列者への感謝の気持ちと、わざわざ時間と手間をかけて集って頂いた労いを、自らの率直な気持ちとして伝えることが挨拶の本義です。
法事別挨拶の仕方
人の死が周囲の人々に与えるものは、時間の経過とともに変化します。
法事においても、時を経ていく中での通過点として、その時々の趣きが変わるので、少しずつ施主の挨拶も汎化します。法事別での、挨拶の例を紹介しておきましょう。
初七日の挨拶の仕方
没後の七日目、初めての法要が初七日です。
以下のような大意の挨拶が適切でしょう。
本日はお忙しい中で、〇〇(故人様の名前)の初七日法要にご参列頂きまして、本当に有難うございました。
おかげさまで、滞りなく法要を終えることができ、心より御礼申し上げます。 慣れないことばかりなので戸惑う中、皆様にはいろいろ励まして頂き、大変お世話になりました。 なにぶん急なことだったので、未だ心の整理ができてはおりませんが、〇〇に心配をかけないように一日も早く立ち直り、家族で力を合わせて生きていくつもりです。 今後とも、私たち家族をどうかよろしくお願い申し上げます。 ささやかではございますが、別席にてお食事の用意をさせて頂いております。 皆様、本日はお集まり頂きまして、誠に有難うございました。 |
四十九日の挨拶の仕方
法事の中でも忌明けの法要を含む、節目とも言える大切な法事が四十九日です。四十九日においての挨拶の例を紹介します。
まずは法要前の挨拶は以下のような大意で行いましょう。
本日は、皆様ご多忙の中でお集まり頂き、本当に有難うございます。
これより〇〇の四十九日法要を執り行いたく存じます。ご住職様、どうぞよろしくお願い申し上げます。 |
四十九日のお斎の始まりの挨拶の仕方
法要が無事終わってから、お斎に移行する斎の挨拶は以下のような大意で行いましょう。
<あいさつ例>
皆様、誠に有難うございました。おかげさまで、〇〇の四十九日法要を滞りなく終えることができました。〇〇も安心していることかと存じます。
今後とも、私たち家族一同に変わらぬご支援のほどをお願い申し上げます。 つきましては、ささやかではございますが、別席にてお食事の用意をさせていただいております。お忙しいとは存じますがご都合の許される限り、想い出話などをお聞かせいただきながら、おくつろぎいただければ幸いです。 本日は誠に有難うございました。 |
一周忌と三回忌以降の挨拶の仕方
一周忌は、故人様の没後満一年の同日を指します。
それまでの追善法要に比べると、親族が主な参列者となります。しかし親しかった友人の方々も集われることが多いのです。
年忌法要としては最初となり、この次は一年後の三回忌までしばらく間が空きますので、特に心をこめて挨拶をしておきましょう。
一周忌の挨拶の仕方やタイミング
一周忌法要を開始する時の挨拶は以下のような大意で行いましょう。
<あいさつ例>
本日は皆様ご多忙の中でお集まり頂き、本当に有難うございます。
これより〇〇の一周忌法要を始めさせて頂きます。本日は、〇〇寺の〇〇住職様にお越しいただいております。それでは、ご住職様、よろしくお願い申し上げます。 |
一周忌法要が終わって、お斎に移行する斎の挨拶は以下のような大意で行いましょう。
<あいさつ例>
皆様、誠に有難うございました。おかげさまで〇〇の一周忌法要を無事に終えることができました。〇〇も安心していることかと存じます。
今後とも、家族ともども変わらぬご支援のほどをお願い申し上げます。 なお、ささやかではございますが、別席にてお膳の用意をさせていただいております。お忙しいとは存じますがお時間の許される限り、〇〇を偲びつつおくつろぎいただければ幸いです。 |
三回忌以降の挨拶の仕方やタイミング
三回忌以降になると、それまで繰り返し行われてきた追善法要に比べて、次第に悲しみも和らいできます。
故人との良き想い出などを思い起こして、施主を含む遺族もより前向きに将来に向かっていることが多くなります。
また、参列者も親族、それも特に親しかった人たちだけになることも多いので、気構えずに感謝の気持ちを挨拶に込めるとよいでしょう。
年月の経過に伴った変化を挨拶に織り込むのもまたよいでしょう。例えば以下のような挨拶です。
<あいさつ例1>
〇〇のいないこの三年は、家族にとって長い年月でした。 しかし皆様方もそれぞれに、三年の年月を重ねられておられます。どうか〇〇の分まで、健やかにお過ごしいただき、今後ともご支援をたまわりますよう、よろしくお願い申し上げます。 |
<あいさつ例2>
〇〇が亡くなった時、まだ学生だった私が、昨年無事に就職することができました。
皆様の暖かいご支援をたまわりましたおかげかと存じ、心より感謝申し上げます。 |
お清め・お斎の献杯の挨拶
お斎の際に施主が献杯の挨拶を行う場合があります。
その際は、以下のような大意で行いましょう。
<あいさつ例>
本日は皆様お忙しい中、お集まりいただきまして本当に有難うございます。
おかげさまで、法要も滞りなく終えることができ、〇〇も安心していることかと存じます。 本日は皆様と〇〇の想い出話などもお伺いしながら、冥福を祈りたいと存じます。 それでは、献杯のご唱和をお願い申し上げます。 献杯。 有難うございました。それではどうぞ、お召し上がり下さいませ。 |
ちなみに、会食の終わり頃には、以下のような締めの挨拶を行いましょう。
<あいさつ例>
皆様、本日は最後までおつき合いくださいまして、本当に有難うございました。
〇〇の想い出話をお聞きするにつれ、あらためて〇〇が身近に感じられました。 なごりはつきませんが、これにてお開きとさせて頂きたく存じます。 どうぞ今後とも変わらぬご支援のほどをお願い申し上げます。 本日は本当に有難うございました。 |
まとめ
法事においての施主の立場としての挨拶の言葉に関して解説しました。
その挨拶が持つさまざまな意味や、法事の流れの中でのどのように挨拶をすればよいかなどを述べ、具体的な例なども紹介しました。
あくまでも例は参考として、ここで紹介した意味合いを踏まえてご自身の言葉で感謝を伝えることが基本と考えていただければよいでしょう。
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