大切なご家族が亡くなられ葬儀が終わると、一般的には四十九日法要を行う日までに自宅の仏壇に安置する位牌を用意します。位牌には故人の戒名が記されるようになりますが、位牌に文字入れする内容や注意点についてよく知らないという人はたくさんいます。

適切な戒名を位牌に文字入れするためには、位牌について正しい知識を持ち、違和感のない文字入れをすることが大切です。そこで本記事では、位牌に文字入れする内容や文字入れの種類、位牌に文字入れする際の注意点について、詳しく説明します。

そもそも戒名とは?

位牌に文字入れする内容について理解するためには、戒名について知っておくことが欠かせません。戒名について知っておくべきポイントは、以下の2つです。

  1. 故人に付与される名前の総称
  2. もともとは生前に授けられるものだった

戒名について正しい知識を身につけておくことで、適切に位牌を用意できるようになり、宗教的な教えに基づいて故人の冥福をお祈りできるようになります。ここからは、戒名について知っておくべきポイントについて、詳しく説明します。

故人に付与される名前の総称

そもそも戒名は、仏教徒が仏弟子になった証として付与される名前のことを言います。信仰している宗派によって違いはありますが、戒名のことを法名や法号と呼ぶところもあります。

亡くなった人は、戒名を授かることで、仏門を開いて死後の世界へ安らかに旅立てるようになるのです。

もともとは生前に授けられるものだった

多くの人は死後に戒名が与えられると考えているようです。しかし、戒名は従来生前に出家して仏弟子となった人が、出家する際に戒名を与えられるものでした。

それが時代の経過とともに、出家をしない人でも、授戒会を行うことで在家のまま戒名を授かることができるようになりました。そして、現在では生前に戒名を受けられなかった人でも、葬儀を執り行う時に戒名を授けてもらうことができるようになったのです。

位牌に文字入れする内容

位牌に文字入れをする内容には、以下の4つがあります。

  1. 戒名
  2. 没年月日(命日)
  3. 故人の名前
  4. 亡くなった時の年齢

どのような内容が文字入れされるかを知っておくことで、位牌に記載されている内容を理解できるようになります。また、故人について、現世のみでなく後世まで語り継ぐことが可能になるのです。

ここからは、位牌に文字入れする内容について、詳しく説明します。

戒名

1つ目は、戒名です。戒名は位牌を見た時に最も目立つように文字入れされているため、位牌に戒名が記されているのを知っている人は多いでしょう。

基本的に、戒名は位牌の表面中央に文字入れされるようになっています。戒名の長さは人それぞれですが、戒名の長さに合わせた位牌を選ぶか、位牌に収まる大きさの文字サイズで戒名を記載するようになります。

没年月日(命日)

2つ目は、亡くなった年月日を現す、没年月日です。没年月日は位牌の表面または裏面に記載いたします。
参考までに、関東では正面、関西では裏面に入れることが多いです。

本位牌に文字入れする場合、亡くなった年を向かって右側に、亡くなった月日を向かって左側に、戒名を挟むように記載します。

故人の名前

3つ目は、故人の名前です。これは、生前のお名前を位牌の裏面に文字入れするのが一般的です。

通常の位牌では、見た人が誰の霊魂を祀っているのかが分からない場合もあります。そのため、生前につけられていた名前も合わせて記載しておくことで、誰が見たとしても、位牌に誰の霊が宿っているか分かるようになるのです。

亡くなった時の年齢

4つ目は、亡くなった時の年齢です。これは裏面に記載するのが多く、行年○○歳や、享年○○歳と記されます。
年齢は満年齢の場合と数え年の場合があります。
一般的には白木のお位牌に記載された年齢を記載いたしますが、既にお仏壇に安置されている先祖位牌と表記が異なる場合は、お寺様へご確認ください。

故人の名前も裏面に文字入れされるのが通常なので、裏面真ん中に俗名(生前のお名前)を記載し、その左側に亡くなった時の年齢を記すようになります。

位牌の文字入れの種類

ここまでは、位牌に1人の名前を文字入れする場合について、記載する内容を紹介しました。しかし、位牌の文字入れには、他にもいくつかの種類があり、代表的なものが以下の3つになります。

  1. 夫婦位牌
  2. 先祖位牌
  3. 俗名位牌

位牌の文字入れの種類を知っておくと、家系や地域の慣習、故人や家族の希望に沿った位牌を用意できるようになります。ここからは、位牌の文字入れの種類について、詳しく説明します。

夫婦位牌

1つ目は、夫婦位牌(めおといはい)です。一般的に位牌は1人につき1つずつ用意するようになっていますが、最近では生前の希望で、夫婦の霊魂を1つの位牌にまとめる人が増えています。

夫婦位牌には、亡くなった後も夫婦で一緒に霊魂を祀ってもらえるというメリットがあるだけでなく、位牌を1つだけ用意すれば良いため、遺された親族の負担を軽減するというメリットもあります。

夫婦位牌を用意する場合は、1人分の位牌とは違い、2人分の戒名を文字入れしなければなりません。そのため、戒名を文字入れするのに十分なサイズであるか、ご先祖様の位牌と一緒に置いて違和感が無いかを、事前に確認してから注文することが大切です。

また、一般的には向かって右側に男性の戒名を、向かって左側に女性の戒名を文字入れするようになっています。しかし、お寺の考え方や家系の慣例によっては、左右反対にしなければならないケースもあります。事前にどちら側に誰の戒名を文字入れするかを確認しておくことで、スムーズに位牌を準備できるようになるでしょう。

先祖位牌

2つ目は、先祖位牌です。亡くなった直後は、1人ごとに位牌を作成するのが一般的になっています。しかし、33回忌や50回忌で弔い上げが終わると、故人の法要が終わったとされ、先祖位牌に切り替えられるようになります。

先祖位牌には故人の戒名や俗名が記載されることはなく、位牌の表面に「○○家先祖代々之霊位」とだけ記されるのが通常です。宗派や家計によっては、文字の先頭に梵字や冠文字を記したり、家紋を記したりするところもあります。これはお寺や家系の慣例によって違いがあるため、必ず入れなければならないわけではありません。

ちなみに、先祖位牌の裏面には何も記載しないようになっているため、過去帳に代々のご先祖様の戒名などを記載することで、どのような人物が家を継いできたかが分かるようになります。

俗名位牌

3つ目は、俗名位牌です。位牌には必ず戒名を記載しなければならないと思われがちですが、実は俗名だけでも位牌を作成できるようになっています。

俗名位牌を作る場合、位牌の表面には俗名に続いて「之霊位」と記載し、裏面には没年月日と年齢を記載します。誰もが親しんできた俗名が、位牌に分かりやすく記されているため、他の人が見ても誰の位牌であるかをすぐに認識することができます。

ただし、戒名をいただいている場合や菩提寺などお寺と付き合いがある場合は、後々トラブルになる場合がありますので、事前に確認が必要です。

位牌に文字入れする際の注意点


位牌に文字入れをする際の注意点を知っておくと、適切に位牌の準備ができるようになります。

ここからは、位牌に文字入れする際の注意点について、詳しく説明します。

注文する際に白木位牌があると良い

位牌を作成する場合、葬儀で使用された白木位牌に記されている文字を、そのまま位牌に転記します。旧字体や梵字の有無などがあり、注文する際に、口頭で戒名を伝えてしまうと、誤字が発生してしまうリスクがあるので避けたほうが良いでしょう。

正確に位牌を作ってもらうためには、位牌を注文する時は、白木位牌を持参すると良いでしょう。

文字色やレイアウトを確認しておく

位牌に文字入れをする場合、あらかじめ文字色やレイアウトを確認しておくことも大切です。一般的に文字色は表面が金、裏面は金・朱・白などがあり、ご自宅の仏壇に先祖位牌がある場合は色やレイアウトを合わせたほうが良いでしょう。

また、1人用の位牌なのか、夫婦位牌なのかという点や、選んだ位牌のサイズによっても、適切なレイアウトが変わってきます。急いで準備すると、違和感のある位牌に仕上がってしまう可能性があるため、あわせて確認しておくことが大切です。

位牌が完成する時期を把握しておく

葬儀では白木位牌が使用されますが、四十九日の忌明けになると、本位牌を祀るようになります。最近は機械で文字入れをすることが多くなっているため、位牌が完成するまでの期間は短くなってきました。

しかし、位牌の文字入れで手彫りを希望される場合は職人の数が減少しており完成まで1ヶ月前後を要す場合もあります。そのことを知らずに注文してしまうと、時期によっては四十九日の忌明けに間に合わなくなってしまう可能性があるため、注意が必要です。

注文をした位牌がどれくらいで納品されるかを、仏具店や葬儀社にあらかじめ確認しておくと、落ち着いて故人の霊魂を供養できるようになります。

宗派による違いとは

位牌に文字入れする戒名には、宗派による違いがあります。一般的な位牌の文字入れについて知っておくことも大切ですが、宗派による戒名の違いについて知っておかなければ、適切な位牌を準備できなくなってしまいます。

ここからは、宗派による戒名の違いについて、詳しく説明します。

宗派による特徴

戒名と聞くと、位牌の表面に記載されている名前全体だと思うかもしれません。しかし、一般的に名前は、院号、道号、戒名、位号で成り立っているのです。そのため、位牌に記されている名前は、これらを連続して表記したものであり、戒名はその名前の一部ということになります。
浄土真宗では院号と法名で構成するなど、宗派により異なる場合がございます。

頭に梵字を入れたり、浄土宗では道号の前に「誉」の文字を入れる場合がありなど、宗教ごとに文字入れの方法に違いがあります。

戒名の命名方法は、信仰している宗教のお寺によって考え方が違うケースもあるため、事前にお寺に確認してみると良いでしょう。

まとめ

本記事では、位牌に文字入れする内容や文字入れの種類、位牌に文字入れする際の注意点について、詳しく説明しました。事前に必要な知識を得た上で位牌を用意しなければ、落ち着いて位牌を準備できなくなるだけでなく、穏やかに故人の霊魂を祀ることができなくなりかねません。

ここで説明した内容を参考にして、宗派や家系の慣例や故人の意向に沿った、お位牌を作成いただければと思います。

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