- 葬儀
香典の正しい書き方を徹底解説 香典のマナーや中袋の書き方まで紹介
/(株)くらしの友 儀典本部
2004年くらしの友入社、厚⽣労働省認定の技能審査制度「葬祭ディレクター」1級取得。
故人様とご遺族に寄り添い、大規模な社葬から家族葬まで、これまで1,000件以上の葬儀に携わる。
お通夜や葬儀に参列する際、悩んでしまうのが香典の書き方やマナーです。せっかく故人や家族に想いを伝えたとしても、マナーに沿っていないと不快に思われかねません。もしもお通夜や葬儀に参列する際は慌てずに、どのようなマナーに沿えばよいのかを確認して、香典を用意しましょう。
この記事では、葬儀の香典の書き方やマナーについて解説します。
※本来「香典」という言い方は仏教用語です。そのため、キリスト教や神道では使いません。しかし広く利用されている言葉ではあるので、本稿では、特に分ける必要がある部分以外では「不祝儀=香典」として解説します。
この記事で分かること
- 香典の外袋の表書きは宗教や宗派ごとに違いがある
- 香典は印刷ではなく手書きがマナー
- 香典のお札は裏向きにして肖像画が下に向くよう袱紗に包み、お悔やみの言葉と一緒に渡す
目次
1 葬儀の香典(不祝儀袋)の書き方
水引のある葬儀の香典(不祝儀袋)には中袋と外袋があり、それぞれの役割は次のとおりです。
- ・中袋:お金を包む
- ・外袋:中袋を包む
それぞれに書く項目は次のとおりです。
- ・外袋:表書きと自分の名前
- ・中袋の表:包んだ金額
- ・中袋の裏:郵便番号・住所・名前
記載する項目の書き方は水引との位置も関係するので、例を見本にしてみましょう。
2 香典の外袋の書き方
外袋に記載する表書きや名前は、次のような位置に記載しましょう。
- ・水引より上部:表書き
- ・水引より下部:自分の名前
表書き、名前ともに書く位置以外にも注意したい点があります。ここではどのように表書きや名前を書くのか解説します。
2-1 上段:表書き
表書きとは、香典を渡す際の名目です。香典袋における表書きは、仏式なら御霊前や御香料、神式なら御神前など、次のように宗教や宗派によって書き方が異なります。
・御香料
・御香典
・御仏前
(四十九日以降※)
※浄土真宗の場合は、四十九日前でも「御仏前」とするのが正式。
(カトリック)
(プロテスタント)
・御玉串料
・御香料
・御香資
例えば、キリスト教であってもカトリックとプロテスタントでは、表書きが異なります。異なる宗教に則った表書きを記載してしまうとマナー違反になってしまうので注意しましょう。
2-2 下段:名前
水引より下には香典を出す人の名前を記載します。個人で香典を出す際は、自分の氏名を記載しましょう。
香典は個人ではなく複数人の連名で出すケースもあります。香典を複数人で出す際は次のように何人で、誰と出すかによって名前の書き方が異なります。
3 香典の中袋の書き方
3-1 香典の中袋の表面、裏面にはそれぞれ次の内容を記載します。
- ・表面:金額
- ・裏面:郵便番号・住所・氏名
中袋の両面にどのように記載するかは、包んだ金額や連名か否かによって異なるので注意しましょう。
3-2 表面:香典の金額
香典にいくら包んだか、金額を書く際は次の表のとおり旧漢数字を使用します。「一、二、三」などの漢数字を使用してはいけないことはありませんが、数字を簡単に書き換えられてしまうことから、改ざん防止のために旧漢数字を使用するのが習わしとされています。
仟(せん)、圓(えん)はそれぞれ阡(せん)、円を使用することも可能です。金額は頭に「金」の文字を、最後に「也」の文字を追加した上で記載します。
なお、全ての香典袋が縦書きという訳ではありません。横書きで金額を記載する香典袋も販売されています。横書きで記載する際は数字の前に、金もしくは¥を記載して算用数字で金額を記載しましょう。数字の後ろには円もしくは「ー」を付けます。
3-3 裏面:郵便番号・住所・氏名
中袋の裏面に記載する項目は次のとおりです。
- ・郵便番号
- ・住所
- ・氏名
なお、住所は部屋番号まで含めて詳細に記載しましょう。
連名で香典を出した場合であっても、氏名はそのまま記載します。しかし、4人以上で香典を出す場合は代表者の氏名と「外一同(ほかいちどう)」の一文を記載します。連名の場合、郵便番号、住所は中袋ではなく別紙に記載するのが一般的です。
中袋は開封の手間を減らすために、のりやシールで封をしない方が望ましいでしょう。
4 香典の中袋がない場合の書き方
香典袋には中袋が付いているのが一般的です。しかし、中袋が用意されていない香典袋を使用するケースもあるかもしれません。例えば、次のような場合です。
- ・封筒タイプの香典袋
- ・中袋を使用しない地域
香典袋の中袋がない場合は、外袋の裏面に住所と氏名、いくら包んでいるかを記載しましょう。記載方法は、中袋に記載する際と同様です。
5 香典の書き方とペンのマナー
香典袋の外袋や中袋に各項目を記載する際にもマナーがあります。ここでは次の点について解説します。
5-1 薄墨と筆を使用するのが基本
香典袋に表書きなどを書く際は薄墨と筆を使用するのがマナーです。水気の多い薄墨は、お悔みの気持ちを表しています。現代では弔事に用いることが可能な、薄墨の筆ペンが便利です。
5-2 筆ペンがない場合はサインペンで代用
急な訃報の連絡を受けた際は、薄墨の筆ペンがすぐに用意できないこともあるでしょう。薄墨の筆ペンを用意できない場合は、サインペンで代用可能です。使用するのは黒色のサインペンです。ボールペンや鉛筆は簡易的なため、マナー違反と捉えられてしまいます。
5-3 名前や金額の記入は手書きが望ましい
香典袋は、文房具店のほか、コンビニやスーパー、ドラッグストアなどで販売されています。香典袋に表書きが印刷されているものを購入することが一般的です。や金額などを記載する際は手書きを心掛けましょう。金額や自分の住所・氏名を記入する際には、手書きが望ましいでしょう。
6 香典の金額相場
ここでは、香典の金額相場を紹介します。香典としてどれくらいの金額を包むのかは、以下のように故人との関係性によって異なります。
身内に不幸があった場合は1~10万円程度包むことが多く、関係性が遠くなるほど相場は下がる傾向にあります。
ただし友人や同僚、上司などであっても家族ぐるみで交流があった場合は、相場よりも高く香典を包むのが一般的です。
6-1 香典は偶数ではなく奇数額
香典は偶数ではなく、5,000円、3万円といった奇数額(上一桁が奇数)を包むのがマナーです。偶数は割り切れる数字のため、故人との関係が切れるイメージを想起させてしまいます。ただ、奇数額であっても避ける必要のある数字が「9」です。「9」は苦をイメージさせてしまうかもしれないからです。
また、包むお札の枚数も奇数を心掛けましょう。例えば、3万円を包むのであれば、1万円札を3枚用意します。1万円札2枚、5千円札2枚では合計4枚で偶数になってしまうので避ける必要があります。
7 香典を書く前に知っておくべきマナー・注意点
香典袋に表書きを記載する前に、次のようなマナーや注意点を知っておきましょう。
7-1 お金の入れ方
香典袋にお札を入れる際は、お札を裏向きに入れて肖像画が下に向くようにするのがマナーです。肖像画を下に向けるのは、悲しくて顔を上げられない、不幸に顔をそむけるといった意味があるためです。何枚かのお札を包む場合は、向きをそろえて肖像画が下担っていることを確認しましょう。
また、新札を包むのは避けてください。新札は銀行などで両替をする必要があることから、「不幸を予期していた」と捉えられかねません。遺族の心に寄り添うためにも、ある程度きれいな古札もしくは真ん中に折り目を付けたお札を包むのが大切です。
7-2 香典袋の折り方
香典袋は折り方(畳み方)にもマナーがあります。香典袋は次のような手順で折りましょう。
- ・中袋を裏返して中央に配して、上包みを右、左の順で折る
- ・中袋に折り返した跡がつかないように、下から上包みを折る
- ・上から上包みを折り、長方形にする
- ・上包みを裏返して水引を中央につける
7-3 香典の包み方
香典を渡す際は袱紗(ふくさ)に包むのがマナーです。袱紗は結婚式などの慶事用、お通夜・葬儀などで使う弔事用があります。色や開き口のマナーが異なるため、慶弔両用でない場合は、それぞれのシーンに合ったものを利用しましょう。
香典袋を包む手順は次のとおりです。
- ・香典袋を袱紗の真ん中からやや右寄りに置く
- ・袱紗の右角を持ち、香典袋の左端に合わせるよう中央に折る
- ・上下順番に袱紗の角を取って香典袋に被せる
- ・袱紗の左側を折って裏に返し、右上と右下に小さな三角を作る
7-4 香典の渡し方
香典を渡す際のマナーはどのタイミングで渡すかによって異なります。いずれの場合であっても家族に「このたびはご愁傷さまです」とお悔やみを伝えるようにしましょう。香典を葬儀場や自宅への弔問時に渡す際のマナーは次のとおりです。
- ・葬儀場:受付で記帳した後にお悔やみを伝えて渡す
- ・自 宅:線香をあげてから、家族に直接渡すか霊前に供える
お悔やみの言葉は長くなりすぎると失礼にあたります。また葬儀に参列できず、弔問した際に香典を直接家族に渡す場合は「御霊前にお供えください」と一言添えましょう。
8 香典の書き方に関するよくある質問
香典の書き方や渡し方について、よくある質問を解説します。
8-1 香典を直接渡せない場合は?
香典を家族に直接渡せない場合は、現金書留封筒を使って郵送も可能です。香典を郵送する場合は次の点に注意しましょう。
- ・宛先は原則として喪主
- ・お悔やみの手紙を同封する
喪主と面識がないのであれば、自分と面識のある故人の関係者に宛てて郵送します。
8-2 香典を辞退された場合は?
喪主や家族の中には、参列者の負担を軽減する、香典返しの手間を減らすために香典を辞退する人もいます。香典を辞退された場合は無理に渡さないようにしましょう。
それでも哀悼の意を示したいのであれば、供物や供花を贈るという方法があります。いずれにしても遺族の負担にならないよう、事前に確認を取ってから贈るのが望ましいです。
8-3 香典の金額五千円の書き方は?
香典として五千円(5,000円)を包む場合は、先述のように旧漢数字を用います。五千円を包んだ場合の書き方は次のとおりです。
- ・金伍阡圓
また、三千円(3,000円)や一万円(1万円)の書き方は以下のとおりです。なお、記載する際は横書きではなく、縦書きで記載します。
- ・三千円:金参阡圓
- ・一万円:金壱萬圓
8-4 香典の連名(3人以上)の書き方は?
香典を3人以上の連名で出す際は、3人か4人以上かで書き方が異なります。
- ・3人:封筒の中心から左に向かって香典を出した全員の氏名を記載する
- ・4人以上:真ん中に代表者の氏名を記載して、左下には外一同(ほかいちどう)と記載する
3人で記載する場合は年長者から記載するのがマナーです。
8-5 喪主が分からない場合の香典の宛名は?
香典を郵送する際、宛名は喪主にするのが原則です。しかし、喪主の名前が分からない場合、香典の宛名は次のとおり記載します。
- ・〇〇様(故人の名前)ご家族様
8-6 香典の表書きは「御霊前」と「御香料」のどちら?
香典の表書きは宗教や宗派によって異なります。しかし、参列する葬儀がどのような宗教や宗派か分からない際は、宗派を問わずに使える「御香料」または「御霊前」と記載することをおすすめします。
9 まとめ
香典の外袋、中袋に記載する項目はそれぞれ異なります。表書き、名前は香典の外袋に、包んだ金額などは中袋に記載しましょう。
表書きは宗教や宗派によって異なり、金額は算用数字ではなく、旧漢数字を使用するなど、香典にはさまざまなマナーがあります。そのため、香典を準備する前には必ずマナーを把握して、故人と家族にお悔やみの想いを伝えるようにしましょう。
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