- 想いをかたちに
第12回「想いは国境を超えて」編
2021年6月 蒲田センター K.H.
大切な人の葬儀に参列できなかった、ご遺体との対面が困難になってしまったなど、コロナ禍の影響で、”普通”の葬儀ができなくなるケースが増えました。そのような状況下であったとしても、ご遺族や生前故人様と親しくしていた方々の悲しみを受けとめる場である「葬儀」の重要性は変わることはありません。
その故人様は、アメリカに住むご家族と離れ、お母様が生まれ育った日本で充実した日々を送られていた20代の男性。若くして仕事で成功を収め、プライベートではご結婚を間近に控えておられました。まさに人生の絶頂期というタイミングでのご不幸に、周囲の方々はさぞ驚かれたことでしょう。
本来なら真っ先に駆け付けたいはずのご遺族は、コロナ禍で来日できないご状況。そのため、日本で暮らす故人様のお母様のご親族と、婚約者様が代表で葬儀と火葬を執り行い、お骨をアメリカのご両親の元へお届けする運びとなったのです。
そんな中、婚約者様からいただいたのは、「葬儀の様子を、アメリカで暮らす彼のご両親にも届けたい」というご要望。
「式に参列できなくても彼の最期のお顔や、彼を慕う人々の様子を見せてあげたいんです」
話し合った末、葬儀の様子をインターネットでアメリカへ中継する、オンライン葬儀をご提案いたしました。
式はアメリカとの時差に合わせ、早朝に開式。祭壇や葬儀の様子が見やすい位置に中継用のカメラを置き、故人様とのご対面も画面越しに行いました。ほかにも、弔電の読み上げや、ご友人に思い出話を語っていただくなど、生前の故人様がいかに充実した毎日を過ごされていたかもご紹介しました。遠く離れたご家族に少しでも故人様を近くに感じていただけるよう、できる限りの工夫を心がけました。
アメリカのご葬儀とはやり方が違う部分もきっとあったと思います。しかし、ほんの僅かでも、故人様とご遺族の距離を縮めるお手伝いができたこと。そして離れた場所におられるご遺族同士のお気持ちをつなげられたことは、さまざまな事情に配慮した葬儀の在り方を模索する上で、貴重な経験となりました。
※肩書きは当時のものです。
※てふてふの「想いをかたちに」から一部を抜粋、再編集したものです。


