- 想いをかたちに
第11回「誕生日祝いに“未来”を託して」編
2021年3月 津田山総合斎場 館長 N.N.
ご葬儀は、故人様のご冥福をお祈りする場であり、ご遺族によって執り行われるものです。私どもはご遺族の最後のお別れの場をお手伝いする役であり、参列者の方々とご一緒に何かをする機会はほぼありません。しかし、1度だけ参列者の方々がご遺族に内緒でサプライズをご用意され、そのお手伝いをしたケースがありました。
3歳くらいの男のお子様を残されたお若い女性のご葬儀のことです。1人の参列者の方に、「お通夜の後に買ってきたホールケーキを置きたいのですが」とご相談を受けました。実はその日が、故人様のお子様のお誕生日当日だとのこと。そういえば、多くの参列者の方々が、大きめの紙袋をお持ちだなと思っていましたが、「もしかして?」と伺うと、やはりお誕生日のプレゼントだそうです。少しでもお子様に笑顔になってほしい、寂しい思いをしてほしくないという皆様のお気持ちに心を打たれ、私どももできる最大限の力を発揮しようと決めました。
参列の方々の想いに触れ
ひと通り式が終わったところで、お子様とお父様には、眠るお母様の横に立っていただき、私は「ここからは○○くんの誕生日会が始まります!」とアナウンス。さらに、「プレゼントをお持ちの方は前にいらしてください」と誘導しました。
この日はエレクトーン奏者がいなかったので、恥ずかしながら私がアカペラで歌う『ハッピーバースデートゥーユー』をBGMに、お1人ずつお子様にプレゼントを渡されました。抱え切れないほどたくさんのプレゼントに、お子様は顔をほころばせて喜ばれ、同じ年くらいのいとこのお子様はちょっと羨ましそうでもありました。
まだ幼いお子様たちの姿を見る周囲の大人は涙ぐんだり、ほほ笑んだり…会場全体が温かい愛情に包まれていたのを覚えています。ご参列の皆様が、お子様にこれからたくさんの幸せが訪れることを願われていたことでしょう。
私どもは日ごろからご遺族の想いに寄り添おうと最善を尽くしておりますが、今回、ご参列の方々の想いをかたちにするお手伝いができたことは、私にとって新たな経験になりました。
※肩書きは当時のものです。
※てふてふの「想いをかたちに」から一部を抜粋、再編集したものです。


