- 想いをかたちに
第10回「母が遺していった家族の宝」編
2021年1月 鷺沼総合斎場 館長 M.H.
これまで数々の葬儀のお手伝いをしてきましたが、今回はそのなかで、ご喪家と私どもが心を一つに、故人様をお送りできたときの話をしたいと思います。
故人様は明るく強く、愛情にあふれたお母様で、お父様とご子息たち家族にとっての精神的支柱。葬儀の打ち合わせで最初にお会いした日は、故人様を失われた悲しみがあまりにも大きいもので、特に何かを決めることもせずに終えました。
翌日、ご子息から「母をきちんと送り出してあげたい」とご連絡をいただき、改めてお会いした2度目の打ち合わせでは、ご家族の歩みやお母様のお人柄や人生など、さまざまなお話をしてくださいました。そして、数冊のアルバムを取り出すと、こうおっしゃいました。「私たちも知らなかったのですが、母は膨大な家族写真をアルバムに整理してくれていたんです。しかも、年代別に何十冊も」。ご家族との宝物のような時間が凝縮されたアルバムには、お母様の愛情があふれており、それだけに、ご家族を残して逝くことへの想いも感じずにはいられませんでした。アルバムの存在を知ったことが、ご葬儀と向き合う一歩につながったのだと思います。ご子息は「葬儀の場で写真をスライドショーにして流したい」とおっしゃいました。
強い想いが作った一体感
私は、少しでも悔いのないご葬儀を行いたいと、可能な限り日取りを遅らせることを提案し、準備に取り掛かりました。お式は無宗教葬でしたが、ご子息たちはその進行についても積極的に提案してくださいました。
式前日には、スライドショーのリハーサルを行いましたが、ご喪家もご同席くださり、3時間ほどかけて、位置や明るさなどを細かく調整していきました。私たちの様子を知った同じセンターのスタッフが、自らの仕事の合間に自主的に手を貸してくれたのもうれしかったことです。
葬儀後、ご喪家に「本当にいい式ができました」との一言をいただけて安堵したのと同時に、皆が力を合わせて一つの式を作り上げられたことに、胸が熱くなりました。一つひとつの式を通してご喪家の想いに触れるたびに、私どももさらに精進しなければと決意を新たにします。
※肩書きは当時のものです。
※てふてふの「想いをかたちに」から一部を抜粋、再編集したものです。


