- 想いをかたちに
第7回「想いをつなげる手書きカード」編
2020年3月 堀切総合斎場 館長 A.I.
大切な人を亡くされる喪失感に違いはありませんが、故人様がまだお若い場合、私どもも、ご遺族や参列者の方々のお気持ちに一層寄り添う必要を感じます。私が担当した葬儀でも、故人様がまだ10代半ばで、不慮の事故によって亡くなられたケースがありました。
故人様のご両親が悩まれていたのが、葬儀に参列する同級生への対応です。身近な人の死を経験したことがないかもしれない年ごろの方々。「あまりショックを受けさせたくはないけれども、娘とも会ってあげてほしい。どうしたらいいでしょうか?」とお尋ねいただきました。
そこで、小さなメッセージカードを柩(ひつぎ)に入れていただくことを思いつきました。お別れのカードそのものが葬儀で使われることは珍しくありません。ただ、今回の場合、メッセージカードが最善かもしれないと考えました。お別れの手紙を書くことで、たとえ死を受け入れられなくても静かに故人様との思い出を振り返る時間ができます。また、柩の中の故人様と対面するのは心理的に重くても、カードをお渡しする目的があれば、自然にお顔を合わせられると考えたからです。
幸いご両親の賛同も得られたので、準備を始めました。しかし、斎場には大勢の同級生の方々に対応できるほどのカードの在庫がなく、急いで近隣の施設から集め、カードを書いていただく台も広めに用意しました。
小さな救いにつながることを
告別式の開式前になると、斎場には同級生の方々が少し緊張した面持ちで集まってきました。
「メッセージを書いて(故人様に)お渡しくださいね」と声を掛けると、最初は戸惑う方もいらっしゃいましたが、お友達と並んで書くうちに笑顔を見せる方もあれば、数枚を使って長文を仕上げる方もいらっしゃいました。皆さん、そのカードを手に柩に向かい、故人様にお別れの言葉を掛けておられました。
故人様のご両親は、同級生の姿やたくさんの言葉が書かれたメッセージカードをご覧になって、「娘の人生は、たくさんの友人たちに愛されて幸せだったと知ることができ、とても救われた気がします」と話してくださったのが印象に残っています。
※肩書きは当時のものです。
※てふてふの「想いをかたちに」から一部を抜粋、再編集したものです。


