- 想いをかたちに
第6回「通夜前にお別れ時間」編
2020年1月 蒲田センター 係長 H.H.
「故人と生前親しかった方々には、心ゆくまでお別れをしてほしい」。多くのご遺族はこのように思われているはずです。住宅事情などにより、故人様をご自宅にお連れし、通夜前にゆっくり時を過ごすことも少なくなりましたが、やはりお別れは悔いなく行っていただきたいと私どもも願っています。今回は、私が経験した、あるケースをご紹介いたします。
故人様は、幼いお子様たちを残して亡くなられた若いお母様でした。喪主であるご主人には、通夜の日も、お子様たちを寝かしつけなくてはならない事情がおありでした。
打ち合わせの場で伺ったのは、「通夜でも斎場に遅くまではいられず、参列してくださった方々に十分ご挨拶もできない。でも、故人と親しかった方々には、ゆっくり故人と最後のお別れをしてほしい。できれば、その場に自分も同席してお話をしたい」というものでした。
あれこれと思案した私は、あるご提案をさせていただきました。「お通夜が始まる前に別途、故人様とのご対面の時間を設けられてはいかがでしょうか」。通常の式の進行とは違う、異例の提案ではありましたが、喪主様のご希望をかなえるためには、この形がベストではないかという確信がありました。
故人様と近しい方々には、喪主様から事前に「お別れの時間」をお知らせいただき、喪主様と故人様のご両親には、故人様の眠る柩(ひつぎ)の前にお座りいただきました。そしてこの時間は、献花や焼香もなく、シンプルに故人様やご遺族とお話をするための時間とし、別室に軽食をご用意して、通夜が始まるまでお過ごしいただけるようにしました。
訪れた方々は、故人様やご遺族とお話しする時間をとても喜ばれていました。ご遺族や喪主様からも「心残りのないイイお別れになりました」とのお言葉をいただき、胸が熱くなったことを思い出します。
仏式の葬儀は通常、決まった手順にのっとって進行しますが、こうして、ゆっくりお別れの時間を設けることもできます。ご喪家のご希望に沿ったご提案の可能性をまた一歩広げた、印象深い経験になりました。
※肩書きは当時のものです。
※てふてふの「想いをかたちに」から一部を抜粋、再編集したものです。


