- 想いをかたちに
第3回「大往生を送る紅白の花」編
2019年3月 八王子総合斎場 館長 M.Y.
「大往生で、おめでたいことと思っています」。ある喪主様との葬儀のお打ち合わせの際、そんな言葉を伺いました。享年百二歳。故人様を、誇らしく感じていらっしゃるご様子でした。
昔から大住生を祝うことはよくあり、今でも地域によっては、参列者に「長寿銭」を配る風習が残っています。「しんみり悲しい葬儀にはしたくないわね」と、喪主様の奥様の一言に勇気をもらい、私はあるアイデアを口にしてみました。「でしたら、花祭壇を紅白に飾りませんか?」。お2人は驚いた顔で私を見つめられましたが、その直後、「それ、素晴らしいじゃないですか!」「お義父さんにぴったりね」と、晴れやかな笑顔を見せてくださったのです。
故郷の風景に包まれて
こうして、紅白の花祭壇作りが始まりました。故人様は雪山の写真を撮るのがお好きだったと伺い、白い花で雪山を想起させる形にデザインしました。そこに、赤い花を点々とあしらい、明るい花祭壇が出来上がりました。実は紅白の花祭壇を手掛けたのは、私にとって初めてのこと。「本当にいいのかな」「喜んでくださるかしら」―少々不安にも感じていました。
でも、喪主様ご夫妻はご覧になるや否や、「わあ、きれい!」「これは父も喜ぶなあ!」と、大きな笑顔をくださったのです。
式の最中も、参列者の方々がほほえみながら「大往生でしたものね」などと話される言葉を耳にしました。おそらく皆さんの気持ちは同じ。長生きして穏やかに天に召された故人様に、感謝とご冥福、そして尊敬のお気持ちを伝えられたくて、ここにいらっしゃっているのです。
長寿社会を迎え、ご葬儀の捉え方にも、さまざまなかたちが増えていくことでしょう。十人十色のご希望に耳を傾け、それぞれの方々のお気持ちをくんでかたちにすることが大事だと、改めて感じました。
ご葬儀後、故人様が山深い雪国のご出身だったと喪主様から伺いました。「上京して以来、父が故郷に帰ることはほとんどありませんでした。でも、雪山に郷愁を抱いていたのでしょう。今日は、故郷の風景に包まれて、きっと喜んでくれている。そんな気がしているんです」
※肩書きは当時のものです。
※てふてふの「想いをかたちに」から一部を抜粋、再編集したものです。


