- 想いをかたちに
第1回「お別れのご挨拶」編
2018年9月 新横浜総合斎場 館長 S.S.
無宗教のご葬儀が増えているなか、仏式の読経に当たる時間をどうお過ごしいただくとお客様のご満足につながるか、考えています。
もちろん、ご家族で決められた形式が最優先ですが、特にご希望がない場合は、こちらからご提案もいたします。
選択肢のひとつとして、私がよくご提案しているのが、「お別れのご挨拶」。ご参列の方々に、故人様に話しかけていただくというものです。
実は、私が「お別れのご挨拶」をおすすめしているのは、あるご葬儀がきっかけでした。
「全員に一言話してほしいので、その進行をお願いできますか?」と、開式前に喪主様からリクエストがあったのです。その場に参列されていたのは、故人様のご家族やご親戚、ご友人のみのご葬儀でした。
式が進み、その時間がやって来ました。事前に皆様にご挨拶のことをお知らせしていたものの、「ご協力いただけるかしら」と少し心配もありました。「では、ここからは故人様に向けて、皆様から一言お願いします」と申し上げたところ、少しざわざわ。でも、順番が回ってくれば、お話をしてくださいました。こうして挨拶が進んでいきました。
式場を包んだ大きな愛
その時間は、とても素晴らしいものでした。
どの方も故人様との大切な思い出をお持ちです。特段の準備がないからこそ出てきた、素直なお言葉もありました。恥ずかしがっていた方がいざお話を始めると、想いがあふれてきたり。さまざまな人によって語られることで、故人様の生前のお姿が立ち上がるようでした。
そのうち、故人様を失った寂しさ、楽しかった思い出、感謝の気持ちなどのさまざまな想いがその場で一つになり、温かい空気が大きく満ちたのを感じました。そのときの感動は、言葉では言い表せません。こういうお別れのかたちもあるのだな、と思いました。
誰かに対する想いをかたちにした言葉は、とても深みがあり、強い力を持っていました。お別れの場での言葉の力を知った、忘れられないご葬儀でした。
※肩書きは当時のものです。
※会報誌てふてふの「想いをかたちに」から一部を抜粋、再編集したものです。


