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三途の川とは?六文銭や石積みの伝承も解説 葬儀で知っておきたい死後の世界観


/(株)くらしの友 商事本部
東京都23区エリアを中心に、法事や葬儀などの施行業務を担当。法事・法要・仏壇や位牌のほか、墓地や墓石など、先祖供養に関連するさまざまな知識をもつエキスパート。
三途の川(さんずのかわ)とは、仏教の影響を受けた日本の死後の世界観において、亡くなった人が極楽浄土に行くために渡るとされる川のことです。
生前に重ねた罪の重さによっても川の渡り方が異なり、この川を無事に渡りきるためには、「六文銭」が必要という話も伝わっています。
賽(さい)の河原の石積みといった伝承も残っていますが、具体的にどのような内容なのか分からない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、三途の川に関する基本的な考え方に加えて、六文銭や賽の河原での石積みの意味、水子供養なども含めて、葬儀にまつわる死後の世界観をわかりやすく解説します。大切な方を偲ぶ時間の中で、供養のかたちについて考える機会となれば幸いです。
この記事で分かること
- 三途の川や六文銭にまつわる基本的な死後の世界観
- 賽の河原の石積みの伝承や、その背景にある意味
- 供養全般に関する考え方と現代での捉え方

目次
1 「三途の川」とは何か?

まず「三途の川」とはどのような考え方なのかについて、日本における死後の世界観を踏まえて解説していきます。
1-1 三途の川の基本的な概念
「三途の川」とは、日本における死後の世界観の中で、彼岸(ひがん・あの世)と此岸(しがん・この世)を分ける境界だと考えられています。あの世へ行くために、死者が渡るとされている川です。
故人は亡くなった後、七日ごとに冥界での審判を受けながら旅を進めるとされており、その最初の節目が「初七日(しょなのか)」です。
この初七日に、故人は生前の行いについて最初の審判を受け、その結果によって三途の川を渡ることが許されると信じられています。
三途の川は、あの世とこの世の境界にあるとされる川で、渡ることで本格的に死後の世界へと進むことになります。
三途の川は、冥土(めいど)と呼ばれる死後の世界に流れているとされ、別名「三瀬川(みつせがわ)」「葬頭河(そうずか)」「渡り川(わたりがわ)」などとも呼ばれています。呼び名はいずれも、亡者があの世へ向かう途中に通る川として語られてきたことを表しています。
1-2 三途の川と現代の葬儀との関係
三途の川は、今でも日本の葬儀文化に深く根付いている存在です。
もともとは仏教における地獄や極楽の概念と深く関わっており、死後の世界を語る上で欠かせません。
この三途の川の考え方は、仏教の教えを基にしながらも、日本独自の死生観や古くからの民間信仰と結びつき、葬送文化の中で独自のかたちへと発展し、広く伝えられてきました。
故人が亡くなった後に行われる供養や儀式の中にも、「三途の川を渡る」という考え方が今も息づいています。たとえば、亡くなってから7日目に行う「初七日(しょなのか)」の法要は、その代表的な例です。
このように、「三途の川を無事に渡ってほしい」という願いを込めた供養は、故人を安心してあの世へ送り出すための大切な習慣として、現代でも多くの場面で受け継がれています。
2 三途の川の由来と仏教との関係
仏教との関連が強い三途の川ですが、実際にどのような関わりがあるのでしょうか。ここでは三途の川の由来と、仏教との関係を詳しく解説します。
2-1 仏教の経典における三途の川
三途の川の「三途」は仏教の教えに由来した言葉です。
仏教の経典では、三途は三つの苦しみの道があると考えられ、三悪道といいます。
三悪道には「餓鬼道(がきどう)」「畜生道(ちくしょうどう)」「地獄道(じごくどう)」が含まれており、以下のような世界として仏教では唱えられています。
他にも三途の川の由来として、川の渡り方が「善人の道」「普通の人の道」「罪人の道」の三通りあることから、三途の川と呼ばれていると考える民間信仰の説もあります。
3 渡し賃としての六文銭とは

葬儀の副葬品として知られている「六文銭(ろくもんせん)」はどのような意味を持っているのでしょうか。三途の川について話す際に、一緒に出てくることが多い六文銭の詳細を解説します。
3-1 六文銭とは何か?意味と由来
六文銭とは、亡くなった人が三途の川を渡るために用意しなければならない渡し賃のことです。三途の川を無事に渡りきるためには、六文銭を支払うことで無事にあの世へ行けるとされています。
「六文」は仏教において重要な数字であり、生と死を繰り返しながら地獄・餓鬼(がき)・畜生(ちくしょう)・修羅(しゅら)・人間・天の六つの世界をさまよう「六道輪廻(ろくどうりんね)」の象徴ともいわれています。
実際に「六文銭」という硬貨があるわけではなく、一文銭の硬貨を6枚そろえた状態のことです。
3-2 なぜ六文銭が必要とされたのか

六文銭は川を渡る際に、渡し守である奪衣婆(だつえば)と懸衣翁(けんえおう)に渡し賃として、支払わなければいけません。六文銭を持っていない場合、奪衣婆と懸衣翁によって衣服を剥ぎ取られてしまうとされています。
この考えが「六文銭を持っていないと三途の川を渡れない」という民間信仰につながったといわれています。
六文銭(ろくもんせん)は、故人が三途の川を渡り、極楽浄土へ向かう旅の途中で困ることがないように持たせる冥銭(めいせん)として、棺に納められるものです。
3-3 奪衣婆(だつえば)と懸衣翁(けんえおう)
先述のとおり、三途の川には懸衣翁と、奪衣婆という老夫婦がいます。この老夫婦は死者を裁判にかける十王に仕えている三途の川の係員です。
懸衣翁と奪衣婆は、六文銭を持たない死者の衣服を取るとされていますが、それぞれ役割が異なります。
六文銭を持たずに川を渡ろうとする死者から衣服を剥ぎ取るのは、奪衣婆が行います。
懸衣翁はその衣服を三途の川のほとりにある衣領樹(えりょうじゅ)と呼ばれる木に掛けるのが役割です。衣服を衣領樹に掛けた後は、枝のたわみ具合で死者の生前の罪を計るとされています。
一般的には奪衣婆の方が広く知られており、奪衣婆を祀るお寺もあります。
3-4 現代の葬儀での扱い
六文銭は死に装束で使用される、頭陀袋(ずたぶくろ)に入れて棺に納められます。
かつては実際の貨幣や銭形の飾りを使うこともありましたが、現在では火葬の際に安全に焼却できるよう、紙製の六文銭を棺へ納めます。
なお、六文銭は主に仏教、とくに浄土信仰や民間信仰の影響が強い地域で見られる風習ですが、仏教でも宗派や地域によっては用いられないこともあります。
また、六文銭は「湯灌(ゆかん)」や「旅支度(たびじたく)」の一環として用意されることが多く、死後の旅に備える意味合いをもつものとされています。
4 三途の川にまつわる伝承
三途の川にまつわる伝承は、いくつもあります。ここでは浅瀬と深瀬、賽の河原の石積みなど、代表的な三途の川にまつわる伝承を紹介します。
4-1 三途の川の「浅瀬」と「深瀬」
三途の川が三瀬川(みつせがわ)とも呼ばれる理由は、川の中に流れの速さが異なる三つの瀬があることが関係しています。生前の行いによって罪の重さが異なり、その違いによって渡る場所が変わるという考えが、三瀬川と呼ばれる由来です。
死者は罪の重さによって「善人」「軽い罪を犯した者」「重い罪を犯した者」の三つに分けられます。
善人は、川に架けられた橋を渡れるので、最も楽に川を渡ることが可能です。
軽い罪を犯した者は、流れの緩やかな浅瀬を歩いて渡るとされており、比較的安全に渡れます。
重い罪を犯した者は、流れの速い深瀬を歩いて渡らなければならず、最も厳しい渡り方だといわれています。
橋を渡る善人や浅瀬を渡る軽い罪を犯した者とは異なり、重い罪を犯した者は深瀬で流され、溺れることもあると言い伝えられています。
4-2 賽の河原(さいのかわら)と石積みの刑
賽の河原は、三途川の手前にある河原で、親よりも先に亡くなった子どもたちがたどり着く場所だといわれています。
仏教の教えでは、親より先に亡くなること(逆縁・ぎゃくえん)は自然の摂理に反しているとされ、そのため亡くなった子どもたちは、自らの罪を償うために賽の河原で石を積み上げる刑を科せられると考えられています。
子どもたちが積み上げた石は、鬼に何度も崩されてしまうため、子どもたちはその度に苦しみ続けるという俗信の一つです。この信仰は、逆縁によって子どもが犯した罪を償うために、永遠に繰り返し行われる苦しみとして描かれています。
しかし、子どもたちが石積みの刑を受けなくて済むように、地蔵菩薩に祈る水子供養(みずこくよう)という供養が行われます。この供養は、亡くなった子ども(特に生まれて間もない子ども)の霊を弔うもので、地蔵菩薩に祈りを捧げることによって、子どもたちが苦しむことなく安らかに成仏できるように願うものです。水子供養では、子どもたちが賽の河原で苦しむことなく、無事に極楽浄土に導かれるようにと祈念するのです。
これは、民間信仰である道祖神の「賽の神」と、仏教における地蔵信仰が合わさったことで「賽の河原」が生まれたというのが通説です。
5 三途の川を渡る条件と死者の行き先
三途の川を渡るための条件とされているものや、川を渡った死者の行き先に関する言い伝えを解説します。
5-1 地獄と極楽の分かれ道
死者が地獄へ行くか極楽へ行くかを決定する閻魔大王の裁きは、死後35日目に行われるという考えがあります。
そのため、故人が極楽へ行けることを願って、閻魔大王の裁きを受ける35日目に「三十五日法要」を行う地域や習慣があります。追善供養として、遺族が法要を行うことで、故人が良い場所に行けるという考えに基づいています。
行き先が地獄と極楽のどちらになるかは、生前の行いと追善供養が影響していると考えられており、法要を行う遺族も少なくありません。昨今は、三十五日法要ではなく、「四十九日法要」を重視するケースも増えており、遺族の判断や宗派によって異なります。
5-2 生前の行いによる分岐
こうした裁きの判断には、生前の行いが大きく関わっているとされています。
・善行を積んだ者
生前に徳を積んだ者はすぐに三途の川を渡って極楽浄土へ向かうことができるといわれています。
・普通の者
特に善行を積んだわけでも、重い罪を犯したわけでもない者は、六文銭を支払うことで三途の川を渡ることができます。ただし、その際には多少の困難を伴うとのも伝えられています。
・罪人
生前に多くの罪を重ねた者は、三途の川を渡ることができず、地獄で裁きを受けるとされています。
5-3 地蔵菩薩による救済
地蔵菩薩によって、罪人や子どもたちが救われるという言い伝えもあります。
前述のように、親よりも先に亡くなった子どもは、賽の河原にとどまって石を積んでと仏塔を作ることで徳を積むとされています。
こうした苦しみを受けず、安らかに成仏できるようにと願いを込めて、地蔵菩薩に祈る風習が今も受け継がれています。石積みに励む子どもの前に地蔵菩薩が現れ、優しく救い導くという伝承も残されています。
道端やお寺、墓地などでよく見かける地蔵菩薩の石像は「お地蔵様」と呼ばれ、子どもの守り神や旅人の安全を見守る存在として親しまれています。
6 三途の川の概念は現代葬儀にどう関係する?

供養は亡くなった人が安らかに旅立つため行われるものです。三途の川の概念が現代における葬儀と具体的にどのように関わるのか、供養するために喪主や遺族が知っておくと良いことを解説します。
6-1 現代の葬儀に残る三途の川の影響
現代においても故人が無事に三途の川を渡れるようにという内容の儀式が葬儀で行われています。葬儀内で僧侶が行う読経や供養によって、死後四十九日までの旅路を支えるという考えが現代にも根付いているためです。
また一部の地域では、三途の川を渡るために必要とされている六文銭を棺に入れる風習が、形を変えて残っているのも、三途の川の概念による影響といえるでしょう。
6-2 死装束の着付け・旅支度
故人の身体を湯灌で清めて、来世への旅立ちに必要な支度として、死装束の着付けと必要な品・六文銭を準備する風習があります。
死装束は、白無地の布でできた経帷子(きょうかたびら)や色味が加わった仏衣を左が前に来るように着付けるのが一般的です。さらに手首と足首を守る手甲と脚絆、頭に付ける天冠を故人に着付けます。
その際、旅の支度の一つとして、道具を入れるかばんを意味する頭陀袋の中に、三途の川の渡し賃である六文銭を入れる習慣があります。
前述のとおり、現代は六文銭の用意が難しいことと、火葬の際に焼却できないことで、貨幣の代わりに六文銭を印刷した紙や、現代の紙幣が使用されることが一般的です。
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6-3 初七日法要
初七日(しょなのか/しょなぬか)は、故人の命日を起算日として7日目のことで、初七日には故人が無事に三途の川を渡れるように願って初七日法要を行います。
初七日は、故人が三途の川のほとりに到着するタイミングだとされ、初めて裁判が行われる日です。
故人の生前の罪と、追善供養によって、故人が三途の川をどのように渡るのかが決まるといわれているため、故人が穏やかに流れる川を渡れるよう祈る目的で、初七日法要は行われます。
初七日法要は一般的に、僧侶や親族、故人にゆかりのある人たちなど、少ない人数で行うことが多いです。
6-4 四十九日法要
故人が亡くなってから49日目にあたる四十九日は、初七日から7日ごとに行われた裁判により、故人が地獄へ行くのか、極楽へ行くのか行き先が決まる日です。故人の行き先が決まる重要な日で「満中陰(まんちゅういん)」とも呼ばれます。
四十九日法要では、故人の成仏を願い、極楽浄土へ行けるように、家族や親族など近親者のみを招いて祈ります。
遺族は四十九日をもって「忌明け(きあけ)」となり、普段通りの生活を送れるようになります。そのため法要後は、忌明けの会食を開くのが一般的です。
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8 まとめ:死後の世界観と葬儀のつながり
三途の川を渡るという考え方は、古くから日本の葬儀文化において大切にされてきました。
伝承の背景や儀式の意味を知ることで、故人に対する深い敬意を表し、遺族や参列者が心を一つにして供養できるようになります。また、葬儀や法要の実践方法に対する理解が深まることで、より確かな気持ちで儀式を行うことができます。
くらしの友では、故人の旅立ちを支えるための葬儀プランや供養のサポートを提供しています。
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