- 葬儀
お葬式の湯灌とは?湯灌の流れや儀式の意味、参加するときの服装やマナーを解説
/(株)くらしの友 儀典本部
2004年くらしの友入社、厚⽣労働省認定の技能審査制度「葬祭ディレクター」1級取得。
故人様とご遺族に寄り添い、大規模な社葬から家族葬まで、これまで1,000件以上の葬儀に携わる。
湯灌とは故人を清めて、来世への旅立ちに備える儀式です。時間の経過とともに現れる体の変化へのケアも実施しているため、故人の尊厳を守りながら旅立ちの準備ができます。
本記事では、湯灌の概要や基本的な流れを紹介します。湯灌にかかる費用やマナーも紹介しているので、併せて参考にしてください。
この記事で分かること
- 湯灌とは、故人の身体を清めて適切な処置を行うとともに、故人の身支度を整え、遺族が感謝や愛情を示す儀式の場でもある
- 湯灌・納棺は末期の水を取り、洗髪・洗体、旅支度(着付け、死化粧など)、納棺の5つのステップで行う
- 湯灌の費用は内容や地域により異なり、目安は10万円~30万円程度が目安
目次
1 湯灌(ゆかん)とは?
湯灌は、故人の体を清める儀式で、最後の別れにおいて敬意を表す重要な儀礼です。清潔に整え、遺族が故人に対する感謝や愛情を表す場ともなります。まずは、湯灌の目的や意味などを詳しく解説します。
1-1 湯灌の前に末期の水を取る
湯灌の前に末期の水を取ります。末期の水とは「死に水」とも呼ばれ、故人の口に水を含ませる儀式です。地域によって異なりますが、脱脂綿をガーゼに包んで割り箸などに括りつけ、茶碗の水に漬けて故人の唇を湿らせる方法が一般的です。末期の水には「あの世で渇きに苦しまないように」といった願いが込められています。
1-2 ご洗髪・ご洗体
次に、ご洗髪を行います。葬儀社などの業者によって浴槽や必要な準備を行い、故人を寝かせます。このとき故人の尊厳やプライバシーを守るため裸体を晒すことはせず、タオルなどで覆うのが一般的です。シャンプーやリンスを使って洗髪し、洗顔を行います。
ご洗髪とともに、ご洗体も行います。ボディーソープで体を洗い、温水でご清浄して体を清めるのが一般的な流れです。
1-2-1 古式湯灌とは
古式湯灌とは、シャワーや湯船で洗髪・洗体を行わずに、タオルやアルコール綿などを使用して故人を清める湯灌の方法です。清拭(せいしき)とも呼ばれます。
前述したシャワーや湯船を使用する湯灌の方法は、遺体に傷や病気による損傷がある場合や、時間が経過して遺体の腐敗が進んでいる場合には難しいです。このような時には、古式湯灌が適しています。
湯灌は故人に対する敬意を表すお別れの儀式であり、大切な意味を持ちます。そのため、古式湯灌は重要な選択肢です。
1-3 死装束の着付け・旅支度
故人の体を清めたら、死装束の着付けと旅支度を行います。旅支度は、仏教の教えに基づき、故人が来世に向かうために必要な品々を用意することを指します。故人があの世で使うとされる道具が含まれ、安らかな旅立ちを願う意味が込められています。
※一部の宗派では内容が異なります。
- ・死装束・仏衣:白無地の布で作られた経帷子(きょうかたびら)が一般的ですが、近年は色味を加えた仏衣も用いられます。経帷子は、左前になるように着付けます。
その他、故人が生前好んでいた洋服を着せることもあります。 - ・手甲(てっこう)と脚絆(きゃはん):手甲は手首に、脚絆は足首に巻く白い布です。手の甲や足首を保護する役目があります。
- ・「六文銭(ろくもんせん)」と「頭陀袋(ずだぶくろ)」:頭陀袋は旅の道具を入れるかばんを意味し、その中には三途の川の渡し賃である六文銭が入れられます。実際の貨幣は棺に入れられませんので、代わりに六文銭を印刷した紙や現代の紙幣が使用されることが一般的です。
- ・「天冠(てんかん・てんがん)」:亡くなった方の頭につける三角形の布ですが、近年では故人の頭にはつけず、編笠に付けて棺に入れます。
これらの旅支度は、穏やかな旅立ちを願う大切な要素です。
1-4 死化粧
死装束を着付け、旅支度を終えたら、死化粧を施します。男性の場合はひげを剃り、女性は薄化粧をします。また髪を整えたり爪を切ったりと、外見を美しく整えます。
ただし地域によっては、ご遺体に刃物を当てることや、化粧を施すことを避ける風習があるため、各地域の習わしに沿って行いましょう。
1-5 納棺を行う
故人の身支度が終わったら、納棺を行います。故人の愛用品などを棺に納めることもできます。
ただし、金属やガラス製品、革・ポリエステル・ビニール・プラスチック・ゴム製品などの燃えにくいものなどは棺に入れることはできませんので、注意が必要です。その他にも、火葬場により棺に入れられるものに決まりがあることがあります。判断が難しいものは、葬儀社に相談をしてから納めるようにしましょう。
なお、納棺の仕方は宗教によっても違いがあります。例えば、キリスト教の場合、神父や牧師が立ち会うのが一般的です。祈りの言葉をささげた後に、故人の家族の手によってご遺体を棺に納めます。他の宗教にも独自の風習があるため、事前に確認をしておくと安心です。
2 湯灌にかかる費用はどれくらい?
湯灌にかかる費用は、内容により異なりますが、目安は10万円~30万円前後です。なおシャワーや湯船を使用しない古式湯灌も、同程度の価格帯です。
湯灌の金額に差が出る理由は、以下の要素が影響しています:
- 1.サービス内容の違い:提供されるサービス内容や品質、細かいケアやオプションが加わることで価格が変動します。
- 2.遺体の状態:遺体の状態が悪い場合、特別な処置が必要になることがあり、その分料金が高くなることがあります。
- 3.地域差:地域によって物価やサービスの需要が異なるため、費用が異なります。
なお湯灌は一般的な葬儀プランに入っていないことが多く、オプションとして依頼するのが一般的です。葬儀にかかる費用に湯灌の追加費用が発生する点に注意が必要です
3 湯灌に関するよくある質問
最後に、湯灌に関するよくある質問を3つ紹介します。湯灌を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
3-1 湯灌には立ち会った方がよいの?
基本的に、湯灌の立ち会いは強制されるものではありません。しかし、故人と対面してお別れできる貴重な時間でもあるため、家族や近しい方には立ち会っていただきたい儀式です。
とはいえ、湯灌は故人との関わりが深い方が立ち会える儀式であり、親族以外の方は家族の同意が必要です。そのため「家族だけで湯灌を行いたい」といった考えをお持ちの方は、湯灌への立ち会いの申し出を断っても問題ありません。その際は「大変心苦しいのですが、家族で静かに見送りたいと考えておりますので、湯灌の立ち会いはご遠慮いただけますと幸いです。」などというように意向を伝えましょう。
なお、子供や妊婦が湯灌に立ち会うことは可能ですが、内容によっては精神的な負担をかけることもあります。状況や本人の体調に配慮して判断することが大切です。
3-2 湯灌に立ち会うときの服装は?
湯灌には、一般的には落ち着いた色の普段着で参加します。カジュアルになりすぎないように注意しましょう。喪服を着用する必要はありません。ただし、湯灌の後に通夜を行う場合は、喪服で参加しても問題ありません。
湯灌は、故人を偲び、家族や親しい方々で最後の時間を過ごす大切な儀式ですので、服装については気を遣い、故人のために心を込めて立ち会いましょう。
3-3 病院で「エンゼルケア」をしてもらったが、湯灌をした方がよい?
エンゼルケアとは、死後に病院などで行われる一連の処置や保清、エンゼルメイクなど、全ての死後ケアを指し、逝去時ケアとも呼ばれます。医療器具を取り除いたり全身を拭いたりします。
ご遺体をきれいな状態にするという意味合いは、エンゼルケアも湯灌も同じです。しかし、湯灌は亡くなってから葬儀までの数日間に起こり得る、遺体の腐敗や遺体へのケアの配慮を担っています。
人は亡くなると、体液が漏れたり出血したりといった変化が生じます。しかし、火葬されるまでの間にこれらの状態を放置することは、故人の尊厳に関わる問題です。そのため、湯灌によるケアを行い、故人の尊厳を保ちながら最後の時を迎えることが重要です。
4 まとめ:湯灌の流れや意味を理解しよう
湯灌とは故人の体を清めて、来世への旅立ちに備える儀式です。亡くなった後に起こり得る体の変化を適切にケアすることで、故人の尊厳を守りながら旅立ちのときを迎えることができます。湯灌は、専門知識と技術を持つプロに任せることで、安心して行うことができます。プロによる湯灌は故人を丁寧に扱い、尊厳を保ちながら適切な処置を施します。これにより、遺族は感情的な負担を軽減し、安心して故人との最後の時を過ごすことができます。
くらしの友では湯灌をはじめ、納棺の儀にも対応しています。経験豊富な専門スタッフが、故人を丁寧に扱い、尊厳を重んじたケアを提供します。
葬儀に関するご相談がある方は、お気軽にくらしの友までご連絡ください。