生前に書いた相続放棄の念書は有効ですか?
特に事業をやっている人の中に、長男に家業を継がせるために、二男と三男に相続放棄の念書を書かせ、「実印を押させたからもう安心」と思っている方が多くいます。
「実はそれは無効です。相続開始前の相続放棄は法律上認められていないので、もし長男に事業用資産や自社株などを引き継がせたかったら、遺留分への対応などの問題はありますが、遺言書を書いておくことが必要です。」とお話しすると驚かれる方が大勢います。
事業用資産の中でも、工場・店舗・賃貸ビルなどの不動産が占める割合は大きいものです。現金や預金であれば、一円単位まで分けることが可能です。でも、不動産は売却して資金化しない限り、きれいに分割することは難しいです。「話し合いがつかないので、共有にする。」と言われる方もいますが、これは究極の問題先送りかもしれません。それも選択の一つではありますが、兄弟で不動産を共有すると、いずれ代替わりした時にその子供や孫へと所有者がどんどん増えていきます。結果的に、実務的な収拾がつかなくなり身動きが取れなくなることは、多くのケースで見られます。
せっかく築き上げた財産や家業であればこそ、トラブル無く後継者に引き継ぎたいもの。そのため遺言書は家族への大事な思いやりではないでしょうか。