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土葬とは?現状の扱われ方や必要な手続き、メリット・デメリットを解説
/(株)くらしの友 儀典本部
2004年くらしの友入社、厚⽣労働省認定の技能審査制度「葬祭ディレクター」1級取得。
故人様とご遺族に寄り添い、大規模な社葬から家族葬まで、これまで1,000件以上の葬儀に携わる。
日本では、亡くなった人を土に埋める「土葬」は、かつて一般的な埋葬方法でした。しかし、現在では火葬が原則であり、土葬はほとんど行われていません。土葬を希望する場合は、法律や自治体のルールに沿った手続きが必要です。
本記事では、土葬の基本から日本における歴史と現状、可能な地域などを詳しく解説します。メリット・デメリットも紹介するので、参考にしてください。
この記事で分かること
- 土葬の意味と日本における歴史
- 日本で土葬を行う場合の条件や必要な手続き
- 土葬のメリット・デメリットと現代での位置づけ
目次
1 土葬とは?
土葬(どそう)とは、遺体を火葬せずにそのまま土に埋葬する葬法のことです。古くから「自然に返る」という思想を尊ぶ埋葬方法として行われてきました。遺体を棺に納めて埋葬する方法のほか、宗教や地域によっては直接土に触れる形で埋葬する場合もあります。
世界的に見ると、土葬はイスラム教やキリスト教の一部などで、宗教的理由からで広く行われている埋葬方法です。特にイスラム教では火葬が禁じられており、亡くなってから24時間以内に埋葬することが推奨されています。
一方、日本ではほとんどが火葬ですが、土葬は「命が自然に返る」という思想を大切にした葬法として今も関心を集めています。文化的・宗教的な背景によって形を変えながら、長く受け継がれてきた埋葬方法の一つといえます。
2 日本の土葬の歴史
日本では、古代から長らく土葬が一般的でした。縄文時代には体を曲げた状態で埋葬する「屈葬(くっそう)」、弥生時代以降には手足を伸ばした「伸展葬(しんてんそう)」が行われるようになります。これらはいずれも遺体を自然に返すことを目的とした葬法です。
その後、仏教の伝来によって火葬の習慣が広まり始めます。奈良時代には僧侶や貴族の間で火葬が行われ、平安時代には一部の階層で主流となりました。ただし庶民の間では、江戸時代に至るまで土葬が一般的であり、地域によっては長く続いていたとされています。
明治時代には一時的に「火葬禁止令」が出され、神道の教えに基づき土葬が奨励された時期もありました。しかし衛生面や土地不足の問題が深刻化し、20世紀以降は火葬が急速に普及します。戦後の都市化とともに墓地の確保が難しくなったことも、火葬の主流化を後押ししました。現在、日本全体の火葬率は99%を超えています。
3 日本での土葬の現状
現代の日本では、法律上土葬自体は禁止されていません。ただし、衛生面の懸念や土地利用の制約から、実際に土葬を行える地域はごくわずかです。多くの自治体では墓地や埋葬に関する条例で火葬を前提とした運用を定めており、土葬の許可を得るには厳しい条件が課されています。
一部では、災害や感染症の流行といった非常時に、例外的に土葬が行われるケースもあります。例えば大規模な震災やパンデミックの際、火葬施設の稼働が追いつかない場合に臨時で埋葬されることがありますが、これもごく限られた対応です。
一方、自然と共生する「樹木葬」や「自然葬」などが注目され、土葬に近い考え方が再び関心を集めています。ただし、これらはあくまで火葬後の遺骨を埋葬するものであり、土葬とは異なります。日本では現在、例外的に実施される葬法という位置づけが適切です。
4 日本で土葬が可能な地域はある?
日本で土葬ができる地域は、非常に限られています。主に条例で禁止されていない地域や、伝統的な慣習を重んじる地域に限定されています。具体的には、北海道・宮城・栃木・茨城・山梨・岐阜・京都・奈良・三重・鳥取・高知などの一部地域で、条件付きで土葬が認められている場所があります。
これらの地域では、寺院墓地や民営墓地が独自の方針で土葬を受け入れている場合もあります。例えば、地域の風習を大切にしている寺院や、先祖代々の墓地を維持している家庭では、今でも土葬が行われることがあります。
ただし、土葬が可能な理由は「条例上の制限がない」あるいは「墓地管理者の判断による許可」が前提であり、全国どこでも自由に選べるわけではありません。実際に希望する場合は、自治体や墓地管理者に確認し、専門業者に相談することが欠かせません。
5 日本で土葬するために必要な手続き
日本では法律上、土葬自体は禁止されていません。しかし実際に行うためには、複数の手続きと条件を満たす必要があります。まず行うのが「埋葬許可証(死体埋火葬許可証)」の取得です。これは、故人の死亡届を市区町村役場に提出した際に「死体埋火葬許可申請書」を提出し、交付を受けることで取得できます。
土葬を行う場合でも、火葬と同じく死亡届を市区町村役場に提出し、「土葬許可証」の交付を受ける必要があります(自治体によっては「埋葬許可証」)。死亡届は死亡診断書と一体で、死亡の事実を知った日から7日以内に提出し、これを受理された後に、土葬を行う墓地・霊園で「土葬許可証(埋葬許可証)」の管理者に提出して許可を得る流れです。土葬は法律で禁止されていませんが、自治体の条例や墓地の受け入れ状況(土葬可能な場所は限られる)を確認することが重要です。
そのため、土葬を希望する場合は、まず「土葬が可能な墓地・地域」を探す必要があります。手続きの煩雑さや自治体ごとの制約も多いため、実際には「土葬の会」などの専門団体に相談しながら進めることが現実的です。法律上は可能でも、実施できる地域は限られている点を理解しておきましょう。
6 土葬を選ぶメリット
火葬が主流となった現代においても、土葬には宗教的・精神的・環境的な観点から見た意義があります。ここでは、土葬を選ぶことで得られる主なメリットを紹介します。宗教や自然との関わり、文化の継承など、さまざまな側面から説明します。
6-1 宗教の教えを尊重できる
宗教上の理由から土葬を選ぶ人もいます。例えばイスラム教では、火葬がタブーとされており、教義に基づいて遺体をできるだけ早く土に葬ることが義務づけられています。また、キリスト教の一部宗派では「死後の復活」を信じる教えから、遺体をそのまま埋葬することが望ましいとされています。
このように、土葬は信仰の教えを尊重し、その宗教が大切にしてきた葬送文化を守る手段の一つです。日本でも外国人信者や宗教施設によって、教義に沿った土葬を受け入れる例があります。宗教的背景によって葬法が異なることは、世界各地の文化の多様性を示すものといえるでしょう。
6-2 故人を大地に返せる
土葬は、遺体をそのまま土に返すことで「人は自然から生まれ、大地に返る」という思想を体現する葬法です。焼却の過程を経ないため、より自然な形で生命の循環に身を委ねられる点が特徴です。
火葬という行為に抵抗を感じる方や、故人を穏やかに見送りたいと考える方にとって、土葬は温かみのあるお別れの形となる場合もあります。また樹木葬や自然葬などの「自然に返る葬送」と共通する思想が見られ、自然との共生を大切にした選択肢とされています
6-3 環境に配慮できる
火葬は、燃料としてガスや灯油を大量に使用するため、二酸化炭素や微量の有害物質が発生します。これに対し、土葬は燃料を必要とせず、温室効果ガスを排出しない点で環境への負担が少ない葬送方法です。
そのため、近年では環境保護の観点から土葬を再評価する動きも見られます。自然葬やエコ葬と同様に、地球環境に配慮した持続可能な葬送の一形態として関心を集めています。ただし、完全に環境負荷がないわけではなく、衛生管理や埋葬場所の維持にも一定の配慮が必要です。
6-4 古い文化を継承できる
日本各地には、古くから土葬の風習を大切に守ってきた地域が残っています。山間部や農村部などでは、先祖代々の土地に埋葬する文化が今も受け継がれており、地域の伝統として大切にされてきました。
土葬は単なる葬法ではなく「土地と家族のつながり」を象徴する文化でもあります。地域の風習を次世代に伝えたいという思いから、土葬を選ぶ方もいます。奈良県や高知県など、伝統的な地域ではその文化を守る活動も行われており、風習の継承という点でも重要な役割を担っています。
7 土葬を選ぶデメリット
土葬には宗教的・文化的な価値がある一方で、課題も指摘されています。ここでは、衛生面・費用・土地・社会的理解など、多角的な視点から考えられるデメリットを紹介します。選択の前に、こうした課題を理解しておくことが大切です。
7-1 衛生面に懸念が残る
土葬では、遺体の腐敗によって土壌や地下水を汚染する恐れがあると指摘されています。衛生管理が不十分な場合、感染症拡大の原因となるリスクもあるため、公衆衛生の観点から注意が必要です。
このような懸念から、多くの自治体では条例で土葬を制限しており、火葬を推奨する方針をとっています。海外では防腐処理(エンバーミング)や専用施設を設けることで衛生対策を行うケースもありますが、日本では制度や設備の面で難しい地域が多いのが現状です。衛生上の課題が指摘されてきたことが、土葬の普及を妨げる一因となっています。
7-2 広い土地が必要になる
土葬は、火葬後に遺骨を納める埋葬方法と異なり、遺体そのものを埋めるため広い土地を必要とします。さらに、遺体が動物に掘り起こされないよう、深さ約2mの穴を掘る必要があり、作業にも相応の労力が必要です。
海外では郊外に広大な墓地が確保されている国もありますが、日本は国土が狭く、特に都市部では埋葬地を確保することが現実的に難しい場合が多く見られます。こうした地理的制約も、火葬が主流となった背景の一つといえるでしょう。
7-3 火葬よりも費用がかかる
土葬を行う場合、墓地の永代使用料や管理費、埋葬作業費、搬送費などの費用がかかります。さらに、衛生面を考慮して防腐処理(エンバーミング)を行うと、追加で20万円前後が必要になることもあります。
費用の総額は、地域や墓地の条件によって異なりますが、おおむね50万〜300万円程度が目安です。土葬に対応できる墓地が少ないため、希少性が価格上昇の要因となるケースもあります。火葬に比べて準備や費用負担が大きくなる点は、事前に理解しておくとよいでしょう。
7-4 周囲の理解を得にくい
日本では火葬率が99%を超えており、土葬はごく限られた地域でしか行われていません。そのため、土葬に対して心理的な抵抗を持つ人も多く、家族や親族間で意見が分かれることもあります。
実現するためには、故人の宗教的信念や思想的な理由を丁寧に説明し、周囲の理解を得る努力が欠かせません。葬送の形は本来自由である一方、社会的な慣習との折り合いをつける必要もあります。選択の自由を尊重しつつ、対話と説明を重ねることが重要です。
7-5 墓地の移動は難しい
土葬されたご遺骨は、時間の経過とともに土に返るため、後から掘り起こして移動するのは容易ではありません。改葬を行う場合、専門的な技術や衛生管理が必要であり、費用も高額になる傾向があります。
また長期間が経過すると遺骨がほとんど残らず、物理的に取り出せないこともあります。墓地を移す際には、役所への申請や証明書の取得など複雑な手続きが必要です。こうした点から、土葬を選ぶ際には将来的な墓地管理や継承についても慎重に検討する必要があります。
8 まとめ


