- 葬儀
納棺師になるには? 仕事内容や必要な資格、向いている人の特徴を解説
/(株)くらしの友 儀典本部
2004年くらしの友入社、厚⽣労働省認定の技能審査制度「葬祭ディレクター」1級取得。
故人様とご遺族に寄り添い、大規模な社葬から家族葬まで、これまで1,000件以上の葬儀に携わる。
納棺師は、故人の体をきれいに整え、穏やかな表情で旅立てるよう支える専門職です。ご家族に静かに寄り添い、最期のときを穏やかに迎えられるようサポートする役割も担っています。
本記事では、納棺師の役割や仕事内容、資格の有無、向いている人の特徴などを分かりやすく解説します。故人とご家族の最期の時間を支える仕事の意義を知りたい方は、ぜひ参考になさってください。
この記事で分かること
- 納棺師の役割と、湯灌師(ゆかんし)・エンバーマーとの違い
- 納棺師の主な仕事と、それぞれの意味
- 納棺師に必要な資格の有無や向いている人の特徴
目次
1 納棺師とは?
「納棺師」とは、故人の体や顔をきれいに整え、棺に納めることを専門とする職業です。髪を整え、衣服を着せ、生前の穏やかな姿に近づけることで、ご家族が安心してお別れできるようにサポートします。
似た職業に「湯灌師」や「エンバーマー」もあります。湯灌師、エンバーマー、納棺師はいずれも故人に関わる専門職ですが、それぞれ役割が異なります。
・湯灌師
故人の体を清め、髪や顔を整える「湯灌(ゆかん)」を担当。安らかな姿に整える工程です。
・エンバーマー
故人の体を防腐処理や整容により保存・整える専門職。葬儀まで遺体の状態を保つことが目的です。
・納棺師
故人の衣装を整え、副葬品を棺に納める工程を担当。旅立ちの姿を整えます。
なお、同じ担当者がこれらの工程のいくつかを担当する場合もありますが、内容としては「清め」「保存・整容」「納め」の工程が区別されています。また、湯灌を担当するスタッフは「湯灌納棺師」と呼ばれることもあり、
2 納棺師になったら具体的に何をする?
納棺師の仕事には、いくつかの工程で構成されています。どの工程にも意味があり、いずれも故人の体を清め、穏やかに旅立てるよう整える大切な役割を持っています。ここからは、納棺師の主な仕事内容を見ていきましょう。
2-1 末期の水
末期の水(まつごのみず)は、亡くなった方の口元を水で潤す儀式です。割り箸の先に脱脂綿を巻き、水を含ませて唇にそっと触れさせます。「あの世で喉が渇かないように」という願いが込められています。
この風習は、お釈迦様が亡くなる前に水を求めたという仏教の逸話に由来します。安らかな旅立ちを祈る気持ちを象徴する儀式として受け継がれてきました。
地域や宗派によっては行わないこともあります。また必ず納棺師が担当するとは限らず、ご家族や葬儀社のスタッフが行う場合もあります。
2-2 湯灌(ゆかん)
湯灌(ゆかん)とは、故人の体をお湯やぬれたタオルで洗い清める儀式です。旅立ちの前に身を整える意味があり、心身を清らかにするという思いが込められています。
湯灌には二つの方法があります。シャワーなどで体全体を洗う「普通湯灌」と、ぬれたタオルで体を拭く「古式湯灌(清拭での湯灌)」です。古式湯灌は簡易的な方法で、葬儀プランに含まれている場合もあります。
長期の療養で入浴できなかった方や、生前お風呂が好きだった方をしのぶ意味合いも込められています。なお宗派や地域によっては、湯灌は行わないケースもあります。
2-3 着替え・見繕い
湯灌が終わると、故人のお着替えが行われます。かつては白い死装束を身に着けるのが一般的でしたが、近年では生前に愛用していた洋服やスーツ、着物などを選ぶご家族も増えています。好きな服を着せることで、その人らしさを残したまま旅立ちを見送れると感じる方も多いようです。
お着替えの際には、納棺師が頬や口元に綿を詰めて表情を和らげ、生前の穏やかな顔立ちに整えます。ご家族が立ち会い、ボタンを留めるなどの作業を手伝うこともあります。この時間は最期の身支度を共に行う大切なひとときです。故人との思い出をふり返りながら、静かに手を合わせるような気持ちで進められます。
2-4 化粧(エンゼルメイク)
化粧(エンゼルメイク)は、故人の表情を整える大切な工程です。ファンデーションや口紅で肌の血色を補い、髭剃りや眉の手入れなどを行いながら、生前の面影に近づけていきます。頬や鼻に綿を入れて輪郭を整えることで、自然で穏やかな表情を保ちます。
病気や老衰などで変化したお顔が、化粧によって安らかで優しい印象に戻ると、ご家族の悲しみが和らぐこともあります。希望があれば、故人が愛用していた化粧品を使ったり、ご家族が一緒にメイクを施したりすることも可能です。化粧は外見を整えるだけではなく、心を込めて送り出すための温かい儀式でもあります。
2-5 納棺
全ての支度が整ったら、ご遺体を棺に納めます。納棺は、故人をこの世から送り出す重要な場面の一つです。通常は2人以上で慎重に行い、体を傷つけないよう細心の注意を払います。
棺にご遺体を納めた後は、胸元で手を組ませたり、布団をかけたりして安らかな姿に整えます。その後、ご家族が故人の愛用品や思い出の品を入れ、蓋を閉じたら納棺の儀は完了です。
この瞬間は、多くのご家族にとって「本当の別れ」を実感する時間です。納棺師は、ご家族の気持ちに寄り添いながら静かに声をかけ、穏やかに儀式を進めます。
2-6 故人やご家族のケア
納棺師の役割は、故人の体を整えることだけではありません。悲しみの中でも少しでも安心してお別れができるように支えるのも大切な仕事です。ご遺体のお清めや化粧を通して「最期にきれいな姿にしてあげられた」「きちんとお見送りができた」といった実感をもたらし、ご家族の心が少しずつ癒やされていきます。
納棺師は、静かに言葉を選びながら、ご家族の思いを受け止める存在です。このような心の支えの在り方は「グリーフケア(悲嘆のケア)」にも通じます。ご遺体への丁寧なケアは、ご家族へのケアでもあります。悲しみに寄り添いながら、温かい記憶として残るように努めることが、納棺師の大切な使命です。
2-7 死後処置(防腐作業など)
葬儀までの間、ご遺体を清潔で安定した状態に保つため、死後処置も必須の工程です。納棺師は点滴跡や傷がないかを確認し、医療用テープなどで丁寧に保護します。また体液の漏れやにおいを防ぐために、鼻や口に脱脂綿を詰めたり、アルコールで全身を拭いたりして清潔に保ちます。
必要に応じて冷却材を使用し、体の温度を下げて腐敗を防ぐのも一般的です。ただし、これらはあくまで外見や衛生を整える作業であり、医療的な防腐処置(エンバーミング)とは異なります。
ご家族には処置の内容を説明し、安心して見守ってもらえるよう心掛けます
3 納棺師になる方法は?
納棺師になる主な道は二つです。葬儀会社や納棺専門会社へ就職して現場で学ぶ方法と、専門学校で基礎から学ぶ方法です。以下で、それぞれの方法の特徴を紹介します。
3-1 葬儀会社・納棺専門の会社に入る
1つ目は、葬儀会社・納棺専門の会社に入る方法です。採用後は先輩の補助に入り、現場の流れや衛生管理、所作、声かけを学びます。装いの整え方や道具の扱いも、実務の中で身に付けるのが一般的です。
葬儀会社では、納棺以外にも式場準備や案内、接遇などを経験する場合があります。そのため葬儀の全体像も理解できるのが利点です。
納棺専門会社は、湯灌やエンゼルメイク、納棺といった工程に集中するので、技術を深めやすい点が魅力です。
研修制度を用意する会社もあります。チームで動くため、協調性や報連相が重要です。夜間の呼び出しや移動がある勤務形態も想定しておきましょう。現実的な働き方を理解し、無理のないペースで成長する姿勢が大切です。
3-2 専門学校へ行く
2つ目は専門学校に行く方法です。専門学校では、葬儀全般の知識と実技を体系的に学べます。納棺の基礎、エンゼルケア、衛生管理や感染対策、マナー、心理学の基礎などを幅広く扱います。現場実習を通じて、所作や道具の扱いに慣れる機会もあります。
カリキュラム例としては、葬祭実務、接遇、宗教儀礼の理解、遺族対応時のコミュニケーションなどです。修業年数は1〜2年が目安で、卒業後は、葬儀会社や納棺専門会社へ就職するケースが一般的です。
専門学校を選ぶ際には、実習の多さや講師の現場経験、資格取得の支援、就職サポートの有無などを確認しましょう。また学費や通学しやすさも大切な要素です。自分の学び方に合う環境を選ぶことで、入社後の適応もスムーズになります。
4 納棺師に資格は必要?
納棺師になるための国家資格や必須資格はありません。未経験から葬儀会社や納棺を専門に行う会社へ入り、現場で学ぶ人が多い仕事です。お客さま対応や所作、衛生管理などは、実地で身に付けます。
一方で、専門性を高めたい人には民間資格があります。例えば「納棺士認定試験」のような、業界団体が認定する納棺関連の資格です。
資格の取得は知識を体系的に学べるほか、信頼性の向上、スキルの証明、キャリアアップ、専門性のアピール、就職・転職で有利になるなど、さまざまな利点があります。
ただし、資格の有無だけで評価は決まりません。礼儀や配慮、安定したコミュニケーション、丁寧な作業が重視されます。故人とご家族に寄り添う姿勢と、責任を持って向き合う覚悟が求められます。資格は“土台を固める手段”と考えるとよいでしょう
5 納棺師にはどのような人が向いている?
納棺師は、故人とご家族の最期の時間を支える仕事です。技術だけではなく、人への思いやりが欠かせません。次のような資質がある人は、力を発揮しやすいでしょう。
- ・人の死に向き合う覚悟がある
- ・共感力が高く、静かに寄り添える
- ・体力と集中力があり、不規則な勤務にも落ち着いて対応できる
- ・手先が器用で、細かな作業を丁寧に続けられる
- ・言葉遣いと所作が丁寧で、場にふさわしい振る舞いを保てる
ご家族は深い悲しみの中にいます。表情や声の調子、立ち位置一つにも気配りが求められます。作業の正確さを前提に、相手の表情をよく観察し、負担にならないようお声がけする力も必要です。
亡くなった方に触れる仕事であるため、最初は戸惑うこともあるでしょう。経験を重ねる中で、冷静さと優しさを両立できるようになる人が長く活躍できます。仕事への誇りを持ちながら、学び続ける姿勢を持っていることが、納棺師に向いている人の共通点です。
5-1 納棺師のやりがい
納棺師のやりがいは、故人とご家族の最期の時間を支えることにあります。きれいに整ったお姿を見たご家族から「きれいにしてくれてありがとう」と言葉をかけられる瞬間は、この仕事ならではの喜びです。
悲しみの中で、ご家族が少しでも穏やかな気持ちでお別れできるように寄り添う納棺師は、その存在自体が心を和らげる支えになります。
6 まとめ
納棺師は、故人の体を清め、装いを整え、ご家族が安心してお別れできるよう支える専門職です。特別な資格がなくても志を持って目指すことができ、経験を重ねながら技術と心を磨いていきます。人の最期に寄り添う責任は重いものの、ご家族からの「ありがとう」という言葉が何よりの励みになる仕事です。
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