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お彼岸にやってはいけないこととは? 期間・日程ややった方が良いことも解説
/(株)くらしの友 商事本部
東京都23区エリアを中心に、法事や葬儀などの施行業務を担当。法事・法要・仏壇や位牌のほか、墓地や墓石など、先祖供養に関連するさまざまな知識をもつエキスパート。
お彼岸の時期を迎えるに当たり「やってはいけないことはあるのだろうか」と疑問を持つ方も多いようです。ご先祖様を供養する大切な行事であるからこそ、誤った認識のままでは失礼に当たるのではないかと心配される方もいるでしょう。
本記事では、お彼岸の成り立ちや、お彼岸の期間にやってはいけないこと、そしてお彼岸に行うとよいことについて詳しく解説します。正しい知識を持ち、気持ちのこもった供養をしたいとお考えの方は、ぜひ参考になさってください。
この記事で分かること
- お彼岸の成り立ちや意味
- お彼岸の期間と日程の仕組み
- お彼岸にやってはいけないことと、やった方がよいこと
目次
1 お彼岸の成り立ち
お彼岸は仏教の教えに基づき、ご先祖様を供養する行事です。仏教では、私たちが生きるこの世を「此岸(しがん)」、悟りの世界や極楽浄土を「彼岸(ひがん)」と呼びます。「彼岸」という言葉は、古代インドのサンスクリット語「パーラミター(paramita)」に由来し「彼方の岸へと渡る」という意味を持ちます。
春分と秋分の日は昼と夜の長さが等しくなる、季節の節目とされています。この時期は、あの世とこの世が通じやすいと考えられ、ご先祖様を供養する習わしが生まれました。
その起源は平安時代にさかのぼり、室町時代には仏教行事として広まり、江戸時代には年中行事として庶民の間にも定着しました。お彼岸は、自然の移ろいの中で先祖を敬う、日本独自の信仰と文化が息づく行事といえるでしょう。
2 お彼岸の期間と日程
お彼岸は春と秋の年2回あり、それぞれ7日間ずつの期間を指します。春分の日と秋分の日を「中日(ちゅうにち)」とし、その前後3日を合わせて計7日間が「お彼岸」です。初日を「彼岸入り」、最終日を「彼岸明け」と呼びます。
春分の日と秋分の日は、昼と夜の長さがほぼ同じになる日で、日付は毎年少しずつ変わります。国立天文台の計算に基づいて前年の2月に正式に発表され、春分の日は3月20〜21日頃、秋分の日は9月22〜23日頃になることが多いです。
この時期は気候も穏やかで、お墓参りや法要を行いやすい季節です。「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉のように、季節の変わり目を感じながらご先祖様に手を合わせ、心を落ち着かせる期間といえます。
3 お彼岸とお盆の違い
お彼岸とお盆は、どちらもご先祖様を供養する行事ですが、その意味と過ごし方には違いがあります。お彼岸は、春と秋の年2回行われるもので、ご先祖様に思いをはせ、お墓参りをしたり、お供えをしたりして過ごします。
一方、お盆は7月・8月に行われる行事で、ご先祖様の霊を自宅に迎え入れて供養します。盆提灯や精霊棚で飾り付け、家族でお迎えの準備をする点が大きな特徴です。地域によっては送り火や盆踊りなどの行事もあります。
4 お彼岸にやってはいけないといわれること
お彼岸の時期にやってはいけないとされる行為は、厳密にはありません。ただし、お彼岸はご先祖様を供養し、心を静めて過ごす期間とされています。そのため、地域や家庭によっては「派手な行事は控える」「祝い事は避ける」といった考えを持つ方もいます。
次に紹介するイベントや行事を行う際は、周囲の人への配慮が大切です。
4-1 派手なお祝い事
結婚式や大きな宴会、祝賀ムードの強い行事は避けます
お彼岸は「故人を偲ぶ静かな期間」なので、派手なお祝い事は適切ではないとされます。
4-2 お宮参り
お宮参りは、赤ちゃんの誕生を祝い、健やかな成長を祈る神道の儀式です。一方で、お彼岸は仏教の行事であり「死」を連想させる期間と考える人もいます。神道では「死」は穢れ(けがれ)とされるため、仏事と重なる時期に神事を行うことを避ける家庭もあります。
もっとも、現代では宗教や形式にこだわらず、家族の都合を優先して行うケースが増えています。絶対に避ける必要はありませんが、親族の意見や地域の習慣に合わせて日程を検討するのが安心です。
4-3 引っ越し
お彼岸中の引っ越しは禁止されているわけではありませんが、引っ越しに追われてご先祖様の供養が後回しになることを気にする方もいます。
春や秋は引っ越しの多い時期でもあるため、避けられない場合もあるでしょう。そのようなときは前後のどこかでお墓参りをするなどして調整しましょう。
4-4 新築祝い
お彼岸に新築祝いをしても問題はありません。ただし「仏事とお祝い事を重ねない方がよい」とする考え方が根付いている地域もあります。もし気になる場合は、彼岸明けに行うなどして日程をずらすのも一つの方法です。
4-5 納車
お彼岸に車の納車を受けても問題はありません。仏教では「喪」の期間に新しいことを始めるのは慎むべきと考えられていますが、お彼岸は喪の期間ではないためです。
一方で「死を連想する時期に納車は縁起が悪い」と感じる人もいます。特に年配の方や地域の慣習を大切にする家庭では、配慮を求められることがあります。気になる場合は、納車日を彼岸明けにずらすとよいでしょう。
4-6 お見舞い
お彼岸のお見舞いは避けた方が無難とされています。ご先祖様を供養する時期であり、病床の方やご家族に「縁起が悪い」と感じさせてしまう恐れがあるからです。禁止されているわけではありませんが、体調や心情に寄り添う姿勢が大切です。
4-7 水遊び
お彼岸に水辺で遊ぶのは控えた方がよいという言い伝えがあります。供養できなかった霊が水の中に引きずり込むといった迷信もありますが、科学的な根拠はありません。
ただし、春彼岸は強風が吹きやすく、秋彼岸は台風の接近が多い時期です。波が高くなる、急な雷雨が起こるなど、事故リスクが上がりやすい傾向にあります。
お彼岸の時期に水辺に出かける際は特に注意し、天気予報と警報を必ず確認しましょう。
4-8 彼岸花を持ち帰ること
「彼岸花を持ち帰ると火事になる」という言い伝えがありますが、直接の因果関係はありません。とはいえ、彼岸花には有毒成分が含まれ、誤って口にすると体調不良を招く恐れがあります。こうした危険性から、戒めのために迷信が広まったという見方もできるでしょう。
鑑賞を楽しむのは問題ありませんが、摘んで持ち帰るのは控えるのが無難です。もし触れる場合は、手洗いを忘れないようにしましょう。
5 お彼岸にやった方がよいこと
お彼岸は、ご先祖様に思いをはせる節目の時期です。ここからは、お彼岸にやった方がよいことを紹介します。
5-1 仏壇仏具の掃除
お彼岸の期間は、ご先祖様への感謝を込めて仏壇や仏具をきれいに掃除します。お彼岸当日に慌てないよう、少し前から準備すると心にも余裕が生まれます。
まずはほこりを払い、乾いた柔らかい布で拭き取ります。金属の部分は専用のクロスで優しく磨きましょう。
ろうそく立てや花立て、香炉の灰も確認し、汚れがあればきれいに掃除します。位牌や仏具は強くこすらず、木地や塗りを傷めないよう配慮しましょう。
仕上げに新しい花やお供えを用意し、静かに手を合わせます。家族で一緒に行うと、故人への思いを共有できるでしょう。
5-2 お墓参り
お彼岸は家族そろってお墓参りをする良い機会です。お墓の掃除も一緒に行い、墓石や花立ての汚れを落としましょう。掃除の後は花やお線香を手向け、静かに手を合わせることで心が落ち着き、ご先祖様とのつながりを感じられます。
特にお子さまと一緒にお墓参りをすることは、ご先祖様を敬う心を自然に学べる貴重な体験となります。季節の移ろいを感じながら、穏やかに感謝を捧げる時間を作ってみましょう。
お墓参りに必要な物のリストは、以下の通りです。
- ・掃除用具(ほうき、ちりとり、タオルなど)
- ・お線香
- ・お花
- ・お供え物
- ・お供え物の下に敷くためのお皿や半紙
- ・バケツなど
5-3 お供え物の準備
お彼岸では、初日である「彼岸入り」にお供えをし、最終日の「彼岸明け」にお供えを下げるのが基本です。期間中は常にお供えがある状態を保つのが望ましいとされますが、日持ちのしないものは中日(春分・秋分の日)を中心にお供えするとよいでしょう。
仏前に供えるものは「五供(ごくう)」と呼ばれる花・香・灯燭(とうしょく)・浄水・飲食(おんじき)5種類が基本となります。
故人の好きだった食べ物や、季節の果物や、春はぼたもち、秋はおはぎなどをそなえるのが一般的です。地域によっては、米や野菜を供えることもあります。お供えを下げた後は、家族で分けていただくことで、供養の気持ちをより深められます。
5-4 彼岸会(ひがんえ)への参加
お彼岸の時期には、多くのお寺で「彼岸会(ひがんえ)」と呼ばれる法要が行われます。これはご先祖様を供養する仏教行事で、檀家や地域の人々が合同で参加するのが一般的です。
彼岸会では、読経や焼香を通して先祖供養を行い、感謝の気持ちを捧げます。菩提寺(葬儀や法要をお願いしているお寺)がある場合は、案内が届いた際に参加を検討するとよいでしょう。
6 まとめ


