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霊柩車とはどのような車?寝台車との違いや種類、手配方法を解説
/(株)くらしの友 儀典本部
2004年くらしの友入社、厚⽣労働省認定の技能審査制度「葬祭ディレクター」1級取得。
故人様とご遺族に寄り添い、大規模な社葬から家族葬まで、これまで1,000件以上の葬儀に携わる。
故人をお見送りする際に使用される「霊柩車」について、実際にはどのような車なのか、どのような手配が必要なのかを知らない方は少なくありません。葬儀の経験はそう何度もあるものではないため、いざというときに不安を感じる方も多いでしょう。
そこで本記事では、霊柩車の役割や寝台車との違い、主な種類などを紹介します。手配の流れや費用の目安、マナー、よくある質問にもお答えしていますので、ぜひ参考になさってください。
この記事で分かること
- 霊柩車の基本や種類
- 霊柩車を手配する方法、費用相場
- 霊柩車を見送る際のマナー、その他よくある質問
目次
1 霊柩車とは?
霊柩車とは、葬儀の際に棺に納められた故人を、葬儀場から火葬場まで運ぶための専用車両のことです。車内には棺をスムーズに出し入れするためのレールや、走行中に棺を安定させるための固定具が備えられています。安全に搬送できるように設計されており、一般車とは構造が大きく異なります。
日本で霊柩車が使われ始めたのは大正時代です。1922年の大隈重信の葬儀で、寺院のような屋根を荷台に取り付けた特別な車が使われたのが現在の霊柩車の原型といわれています。
その後、時代の流れとともにデザインや形状も多様化し、現在では宗派や地域の文化に合わせたさまざまなスタイルの霊柩車が見られるようになりました。現代では厳かな伝統を保ちながらも、落ち着いた外観や高級感を重視した車両も増えています。
1-1 寝台車との違い
霊柩車と寝台車はどちらも故人を搬送する車ですが、使うタイミングと目的が異なります。
寝台車は、病院や施設などの故人が亡くなった場所から、自宅や葬儀場などの安置場所までご遺体を搬送する際に使われます。外観は一般車に近く、周囲への配慮から目立たないデザインになっているのが特徴です。また付き添いの家族が同乗できるよう座席が設けられています。
一方の霊柩車は、葬儀や告別式の後に棺を火葬場へ搬送する際に使用します。荷室は棺専用の設計になっていて、運転席と助手席しか設けられていないのが主流です。
近年では、寝台車と霊柩車の両方の機能を兼ね備えた「寝台霊柩車」と呼ばれる車も登場し、状況に応じて柔軟に使い分けられるようになりました。どちらを使用するかは、葬儀社との打ち合わせの際に確認しておくと安心です。
2 霊柩車の種類
霊柩車には、宗派や地域などによってさまざまな種類があります。ここからは、代表的な霊柩車を4つ紹介します。
2-1 宮型霊柩車
宮型霊柩車は、棺を収める部分に神社や寺院の建築様式を模した装飾を施した車です。
金色の彫刻や木製の細工など、豪華で格式高い外観が特徴で、日本ならではの意匠が凝らされています。
かつては全国で主流のスタイルでしたが、近年では見かける機会が減少しています。背景には、宮型霊柩車の製造や維持に高いコストがかかることに加え、安全基準の厳格化や熟練した職人の減少といった事情があります。また「派手過ぎる」「縁起が悪い」と感じる人も増えていることも一つの要因です。
日本では減少傾向にある宮型霊柩車ですが、モンゴルやアフリカのウガンダなどの豪華な葬送が好まれる国に受け入れられ、現在も活躍しています。
2-2 洋型霊柩車
洋型霊柩車は、近年では主流のタイプの霊柩車です。トヨタのクラウンや日産のフーガ、ゼネラルモーターズのキャデラック、フォートのリンカーンなどの高級車をベースに改造して作られることが多く、外観は高級感がありながらもシンプルです。一見しただけでは霊柩車と分かりにくく、落ち着いた印象を与えます。
昭和天皇の崩御の際に洋型霊柩車が使用されたことをきっかけに、その存在が全国的に知られるようになりました。以降、都市部を中心に宮型霊柩車から洋型霊柩車への移行が進み、現在では主流となっています。
ボディカラーは黒・パールホワイト・シルバーなどがあり、宗派を問わず選びやすい点も人気の理由です。車内は広く設計されており、車種によっては複数人の同乗も可能です。
華美な装飾を避け、宗教色を抑えたデザインが特徴で、現代的で控えめな葬儀を望む方に選ばれる傾向があります。
2-3 バン型霊柩車
バン型霊柩車は、ワンボックスカーやミニバン(乗用)の後部を改造して棺を安置できるようにしたタイプの霊柩車です。外観は一般車に近く、周囲から見ても目立たないのが特徴です。トヨタのエスティマ、エスクァイア、ノアや、日産のエルグランド、セレナ、ホンダのオデッセイなど実用性の高い車種がよく使われています。
寝台車としても使える構造で、状況によって柔軟に対応できるのが大きな魅力です。後部座席を一部残したタイプもあり、ご家族や親族が同乗できる場合もあります。そのため、家族葬や直葬など「目立たず静かに送りたい」と考える方に選ばれる傾向があります。
またバン型霊柩車は他のタイプに比べて費用を抑えやすい点も特徴です。都市部の狭い道路や駐車スペースにも対応しやすく、実用面でも利便性が高いといえるでしょう。「霊柩車と寝台車の中間的な存在」として、近年利用が広がっています。
2-4 バス型霊柩車
バス型霊柩車は、マイクロバスなどを改造し、前方に家族の座席・後方に棺の入るスペースを配置した構造の車です。故人と同じ車で家族が火葬場へ向かえる点が特徴で、別途マイクロバスを手配する費用を抑えられます。
一方でバスに棺を乗せることに抵抗感を持つ方もいるため、利用する際は事前に親族間で相談しておくことが大切です。
バス型霊柩車は、火葬場までの距離が長い地域や、北海道や東北地方などの雪が多い寒冷地で多く見られます。
3 霊柩車を手配する方法
霊柩車の手配は、一般的には葬儀社を通して行います。そのため、家族が個別に専門業者へ依頼する必要はありません。
なお多くの葬儀社は自社で霊柩車を所有せず、提携する霊柩車の専門業者に手配を依頼しています。打ち合わせの際には、専門業者が取りそろえている霊柩車の中から希望する種類や車種を選ぶことができます。走行距離や車種によって料金が変わるため、費用の目安を事前に葬儀社に確認しておくと安心です。
また霊柩車の費用が葬儀プランに含まれている場合と、別料金となる場合があります。葬儀の形式によっても利用車種が異なるケースがあるため、事前相談の段階で希望を伝えておくとスムーズです。
3-1 霊柩車の費用相場
霊柩車の料金は、基本料金に走行距離の加算分を組み合わせる仕組みになっている場合が多く、タクシーに近い料金体系になっています。一般的な相場は、走行距離0〜10kmでおよそ1万8,000〜6万円ほどです。10〜20kmごとに追加料金が発生する場合もあり、距離や車種によって費用は変動します。
また、走行距離のほか、車種による金額の差もあります。宮型霊柩車や洋型霊柩車などは比較的高額に、バン型霊柩車は費用を抑えやすい傾向にあります。地域や時間帯によっても料金が異なる場合があるため、見積もりの段階で詳細を確認することが大切です。
霊柩車の運行は「貨物自動車運送事業法」に基づき、国土交通省の認可を受けて行われています。そのため過度に高額な料金設定や無償での搬送は認められておらず、料金は一定の範囲内で設定されています。
4 霊柩車を見送る際のマナー
霊柩車を見送る時間は、故人との別れを静かに受け止める大切な場面です。基本は礼服(喪服)で参加するのがマナーです。冬場は屋外で待つ間にコートを着ても構いませんが、出発前には脱ぎます。また夏場はジャケットを用意し、露出は避けましょう。
出発の合図があったら姿勢を正し、車が見えなくなるまで故人を見送ります。この間は私語やスマートフォンの操作は控え、動作も静かに保ちましょう。
5 霊柩車についてよくある質問
霊柩車は日常で目にする機会が少ないため、疑問を持つ人は多くいます。ここでは霊柩車に関するよくある質問へお答えしていきます。
5-1 霊柩車には何人乗れる?
霊柩車への乗車人数は車種によって異なります。一般的な霊柩車は棺を搬送することが第一の目的であるため、運転席・助手席の2人乗りが主流です。大きな車種であれば4人ほど乗れる場合もあります。またバン型やバス型の霊柩車であれば、複数人が乗車できる車両もあります。
同乗を希望する場合は、同乗が対応可能な車種かどうかを事前に葬儀社へ必ず確認しましょう。家族全員で移動したいときは、霊柩車とは別に送迎用のマイクロバスやタクシーを手配する方法もあります。
5-2 霊柩車が発車する際にクラクションを鳴らすのはなぜ?
霊柩車の出発時のクラクションは、故人との最期の別れを意味しています。古い慣習の名残で、会場全体にお別れのときが来たことを知らせるのが役割です。
ただし近年は周辺環境への配慮から、短く控えめにする、あるいは鳴らさないという選択も増えています。宗派や地域の慣習、火葬場の運用によっても差があります。
5-3 霊柩車を見たら親指を隠せといわれるのはなぜ?
霊柩車を見たら親指を隠さないと「親の死に目に会えなくなる」「親族に不幸が訪れる」といった迷信を聞いたことがある方もいるでしょう。諸説ありますが、これは大正時代以前の書物が発祥とされています。
昔は親指が魂の出入口であるという伝承があり、また死を穢れとして扱い恐れていたことから「亡くなったばかりの魂が親指から侵入するのを防がなければならない」という意味合いで広まったようです。
5-4 霊柩車の運転に必要な免許証は?
霊柩車は「貨物自動車運送事業法」に基づく特殊用途車両に分類されますが、運転に特別な資格が必要というわけではありません。多くの霊柩車は普通自動車免許(第一種運転免許)で運転が可能です。乗車定員が10人以下の車両であれば、一般的な普通免許で問題ありません。
ただし、バス型霊柩車のように乗車定員が11人以上になる場合は、大型第一種免許が必要です。
6 まとめ
霊柩車は、故人を火葬場へと送る大切な役割を担う車です。霊柩車の種類は宮型・リムジン型・バン型・バス型などがあり、地域や葬儀の形式、遺族の希望によって選ばれるタイプが異なります。
手配は葬儀社を通して行うのが一般的で、希望の車種や走行距離によって費用が変わる仕組みです。事前に相談しておくことで、希望に沿った形で安心して葬儀を進められるでしょう。
株式会社くらしの友では、家族葬をはじめとするさまざまな葬儀プランをご用意しています。寝台車や霊柩車の手配を含むプランもございます。葬儀の事前相談や資料請求、お見積もりも承っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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