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平服(へいふく)とは?お別れ会や法要での服装マナーと選び方を解説


/(株)くらしの友 儀典本部
2004年くらしの友入社、厚⽣労働省認定の技能審査制度「葬祭ディレクター」1級取得。
故人様とご遺族に寄り添い、大規模な社葬から家族葬まで、これまで1,000件以上の葬儀に携わる。
冠婚葬祭や法要の案内には「平服でお越しください」と記載されていることがあります。
実際に「平服」と案内をされても、具体的にどのような服装を指すのかが分からない方もいるでしょう。
この記事では平服とは何なのか、平服の着用が求められる場面別に解説します。葬儀や別れの会、法事などにおける平服の正しい選び方やマナーについても紹介するので、参考にしてください。
この記事で分かること
- 「平服」とはどのような服装を指すのか
- 葬儀・法要・お別れの会などの平服の選び方
- 平服を着用する際のマナーや注意点

目次
1 「平服」とは?意味と誤解されやすいポイント
「平服」とはどのような服装を指すのでしょうか。ここからは平服の意味と、誤解されやすいポイントを併せて解説します。
1-1 平服の意味

平服を広辞苑で調べると「日常に着る服、普段着」と定義されています。
しかし葬儀や法事、結婚式などの冠婚葬祭、就職活動の場で「平服でお越しください」と案内される場合の平服は意味が異なります。冠婚葬祭の場において、平服はトレーナーとジーンズのような普段着を意味するわけではありません。主催者(葬儀であれば遺族や故人)に対して失礼にあたるため、注意しておきましょう。
冠婚葬祭や就職活動における平服は「略礼装」だと考えておけば問題ありません。
葬儀や法事などの弔事では、平服は軽装の「略喪服」を着用し、結婚式のようなお祝いの席では、少し簡易な「略礼服」の着用が求められています。
「平服でお越しください」という案内には、本来であれば礼服や正式な装いで出席する場面において、「今回は格式ばった服装でなくて構いません」という、参加者への配慮の気持ちが込められています。
1-2 まずはおさえたい、喪服の基本3種類

1-2-1 正喪服の特徴
正喪服とは、喪服の中でもっとも格式が高い装いを指します。和装であれば羽織袴、洋装であればモーニングなどが該当します。葬儀の場では、喪主や施主などの主催者が着用します。
男性の場合は、黒紋付に羽織袴またはモーニングが正喪服であり、女性の場合は、五つ紋付きの黒無地の着物に黒帯またはブラックフォーマルが正喪服です。
しかし葬儀の主催者である場合でも、正喪服を着用する人はあまり見かけなくなりました。正喪服に代わり、準喪服を身に付けるのが昨今のスタンダードになりつつあります。
1-2-2 準喪服の特徴
準喪服は一般的な喪服であり、喪主や親族をはじめ一般参列者も葬儀や通夜で着用する装いのことです。
準喪服は、男性の場合はブラックスーツと呼ばれる礼服、女性の場合はブラックフォーマルを着用します。通夜や葬儀の際によく見かける喪服の姿だといえるでしょう。
黒のビジネススーツと喪服のブラックスーツでは生地が異なる点に注意が必要です。喪服には、漆黒のように深い黒色の専用の生地が使用されているという点で違いがあります。
主催者から「平服でお越しください」と伝えられない限り、基本的に三回忌までは準喪服を身に付けて参列するのが一般的です。
1-2-3 略喪服の特徴
主催者から「平服でお越しください」と案内があった場合、着用するのは「略喪服」となります。
一般的に略喪服は、男性の場合は地味な色のビジネススーツ、女性の場合は落ち着いた色のセットアップスーツやワンピースを着用するのが基本です。
詳しい平服のマナーは以下で解説するので、参考にしてみてください。
2 弔事(お別れ会・葬儀・法要など)における平服の基本ルール

葬儀や法要での平服の基本マナーを男女、子ども別に解説します。平服のマナーを理解し、遺族や故人に失礼がないよう気を付けましょう。
2-1 男性の平服
弔事の際に「平服でお越しください」と案内がある場合、男性は黒やダークグレー、紺のスーツを着用するのが一般的です。できるだけシンプルなスーツを着用しましょう。
シャツは、白色のシンプルなデザインのものを着用し、ボタンダウンのシャツは避けましょう。
ネクタイは、光沢のない黒無地ネクタイが一般的です。弔事の場では、光りものは避けた方が良いとされるため、ネクタイピンも原則着用しません。
ベルトは、無地でシンプルな黒色のベルトを選びましょう。
光沢のあるエナメル素材や、大きなバックル、装飾的なデザインのベルトは避けるのがマナーです。
靴や靴下も、基本的には黒無地のシンプルなものを選びます。靴はスエード素材やローファーはカジュアルな印象を与えてしまうため、葬儀の場では不適切です。紐で結ぶタイプの革靴が理想です。
男性の平服は、喪服のように、黒一色ではなくても問題ありません。全体的な色合いとして、落ち着いた色調の同系色でまとめるのが基本です。
光沢感のあるものや、派手なデザイン、装飾品などは弔事の場ではふさわしくないため、着用は控えるよう心がけましょう。
2-2 女性の平服
女性の平服は正喪服・準喪服とは異なり、黒以外の色でも着用可能です。しかしピンクや黄緑など明るい色ではなく、ダークグレーや紺のような落ち着いた色合いが好ましいです。
ワンピースまたはスカートとジャケットのセットアップ、アンサンブルを選べば問題ありません。スカートを身に付ける場合、極端に短いものは避け、ひざ下丈やふくらはぎ丈など、長めのものを選びましょう。
基本的に葬儀の場はパンツスタイルを避けた方が良いといわれていますが「平服でお越しください」と案内がある場合は、パンツスタイルでも大丈夫です。
インナーやトップスも、白などの明るい色は避け、黒や紺などの暗い色を選択しましょう。
女性は、「平服」と言われた場合であっても、靴下ではなく黒いストッキングを着用するのが一般的です。
靴も黒のパンプスを選びます。光沢感のあるものは男性同様、弔事の場面ではふさわしくないため、光らない革製や布製のものを身に付けてください。鞄は、派手すぎないデザインかつ、黒の布製が基本です。
アクセサリーも派手なものは選ばず、控えめにしましょう。真珠のネックレスが適切で、指輪は結婚指輪のみ着用しても問題ありません。
2-3 子どもの平服
子どもが学生で制服がある場合は、学生服が正装です。チェックや千鳥柄などの柄が入っているものや、黒以外の色の制服であっても問題はありません。
制服がない場合は、白いシャツを着用し、黒やグレーのズボンまたはスカートが基本です。寒い場合は、暗い色のカーディガンや上着を羽織っても問題ありません。
また靴はローファーが好ましいとされていますが、シンプルで落ち着いたデザインであれば子どもの場合はスニーカーを着用しても大丈夫です。ただし、金具やリボンなどの装飾がある靴は避けます。
キャラクターものや派手なデザイン、色の服は避け、露出が控えめになるように意識し、黒や紺などの落ち着いた色調のものを選びましょう。
3 平服の選び方と注意点
平服の選び方を通夜や葬儀、法要、お別れの会などシーン別や、宗教・宗派、地域性ごとに解説します。注意点も紹介するので参考にしてください。
3-1 シーンによる違い
平服を着用する場面が、通夜・葬儀やお別れ会、法要なのかによっても、平服の選び方は異なります。シーンに合わせて適切な服装を選ぶように心掛けましょう。
3-1-1 通夜・葬儀
基本的に通夜や葬儀では、正喪服や準喪服を着用します。葬儀では「平服でお越しください」と案内されていても、喪服を着用して行く場合も多く見られます。
男性であればブラックスーツ、女性はブラックフォーマルと呼ばれる喪服を身に付けます。
通夜や葬儀の場では、喪服の格式をそろえる必要があり、喪主や遺族よりも格式が高い装いは控えるのがマナーです。どの格式の喪服を着用すれば良いのか迷った場合は、他の参列者や遺族に相談をして、喪服の格式をそろえるようにしましょう。
3-1-2 お別れ会
お別れ会とは、近親者のみで密葬や家族葬を行った後で、生前に故人と関わりが合った方を広く集めて行う会のことです。家族葬を選択する遺族が増えていることもあり、お別れ会は近年増加の傾向にあります。
お別れ会では読経や焼香などの、葬儀や法事のような儀式はなく、多くの場合は献花や会食が行われます。お別れの会での服装は、略喪服である平服が基本です。服装の指定がなければ、平服を着用していきましょう。
お別れ会は、葬儀場やホテル、レストランなどで開催されるのが一般的で、会場の雰囲気に合わせたカジュアル過ぎない服装を心がけましょう。
3-1-3 法要
四十九日・一周忌などの法要は、準喪服であるブラックフォーマルを着用することが一般的です。
法要では、遺族は三回忌までは準喪服を着用するのが一般的で、参列者は3回忌からは略礼服である平服を案内されることが多いです。
七回忌以降の法要では、遺族も略礼服である平服を着用します。参列者はできるだけシンプルかつ控えめな服装を心掛けましょう。
具体的には、男性の場合ネクタイや靴、靴下の色は黒以外でも問題なく、女性は派手な服装でなければ問題ないとされています。不安な場合は、遺族や他の参列者に相談するのがおすすめです。
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3-2 宗教・宗派による違い
一般的に仏式や神式、キリスト教式の葬儀における平服の選び方には大きな違いはありません。男性の場合はブラックスーツ、女性の場合は黒のワンピースやアンサンブル、スーツなどを着用します。
キリスト教式(カトリック・プロテスタント)の葬儀では、故人を偲ぶ「祈り」の場としての意味合いが強く、過度に格式ばらない清潔感ある服装(黒や濃紺など地味な色合いの平服)でも失礼にならない場合があります。葬儀においても平服で問題ないケースも多いでしょう。しかし、カジュアルな普段着が許されるわけではないため、注意が必要です。普段着は避けるようにしましょう。
3-3 地域性による違い
地域によって、いつから平服を着用するのかは異なります。風習の違いもあるため、地域性を尊重することが大切です。
関西地方の一部などでは、通夜において喪服ではなく平服を着用する地域もあるため、どのようなしきたりがあるのかを確認しておきましょう。
東京・神奈川などの首都圏では、通夜や葬儀で喪服のように比較的フォーマルな服装が求められる傾向にあります。
3-4 家族葬の場合
家族葬は、家族を中心とした親しい方々のみで執り行う葬儀の形式です。
一般的な葬儀と服装は変わらず、準喪服を着用するのが基本です。遺族側から平服で良いと案内があった場合は、平服で参列しても良いでしょう。
喪主が最も格式の高い装いをする点も、一般葬と違いがなく、参列者は喪主よりも低い格式の服を着用するのがマナーです。
和装は略喪服であった場合でも、格式が高く見えてしまう傾向にあります。喪主や遺族が洋装の場合は、失礼に当たってしまう可能性があるため、和装の着用は控えた方が良いでしょう。
4 平服を選ぶ際のポイントとマナー
平服を選ぶ際の注意点やマナー、平服としてふさわしくない服装の例もご紹介します。
4-1 服装選びのポイント
平服は、具体的な服装の定義があるわけではありませんが、服装選びのポイントを押さえることで、TPOにふさわしい装いを選ぶことができます。
平服の服装を選ぶ際のポイントは、時間帯や会場の雰囲気、参加者の構成、自身の年齢や立場によっても変わります。状況に応じた服装を選択できるよう、それぞれのポイントを意識して選びましょう。
4-2 平服の基本的なマナー
平服にふさわしいとされている服装のポイントを紹介します。
- ・黒・ダークグレーやチャコールグレー・濃紺などの落ち着いた色
- ・無地または目立たないデザイン
- ・肌の露出が少ないもの
- ・光沢のない靴や鞄、ベルト、アクセサリー
平服選びに迷った際は、上記のポイントを参考にして選択してみてください。
4-3 ふさわしくない服装の例
平服としてふさわしくない服装には、いくつか特徴があります。できるだけ以下のような特徴のある服装は避けるようにしましょう。
- ・デニムやTシャツ、スウェット、スニーカーやサンダル、ブーツなど
- ・派手な柄や装飾の入った服装
- ・コットンやリネン、ジャージなどカジュアルな素材を使用した服装
- ・ミニスカートやノースリーブなど露出が多すぎるデザインの服装
- ・革製品やアニマル柄、ファーなど、殺生を連想させるもの
- ・派手で大ぶりのアクセサリーや髪型
- ・素足や派手な色や柄のタイツの着用
平服でも、葬儀にふさわしくない装いをした場合、故人や遺族に対して失礼に当たる可能性があるため気を付けて選ぶことが大切です。
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5 まとめ:平服の選び方に迷ったら相談を
平服とは「略礼装」であり、普段着とは異なります。「平服でお越しください」と記載されていても、カジュアルな服装で向かうのはマナー違反となるため、注意が必要です。
また葬儀の場では落ち着いた色・デザイン・素材が基本であり、派手な服装は避ける必要があります。どのような服装が良いのか迷った場合は、遺族や他の参列者へ事前に確認をしましょう。
くらしの友では、お客さまが安心して葬儀に挑めるようにサポート体制を整えています。24時間365日対応のコールセンターも設置していますので、不明な点がある場合はぜひお気軽にご相談ください。

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